指輪
熱い日々が終わって、後片付けも終えてぐったりとしていた。
ベッドは買い換えて、シーツも何もかも洗った。
千陽を抱きかかえたまま、風呂に入る。
「ふ…あああ…気持ちいい…」
腕の中でうんと手を伸ばして、声を出す千陽に思わず笑う。
暖かい湯船の中、千陽のつむじに口付けた。
ちゃぽんちゃぽんと水面を叩いて音を出して遊ぶ小さな手を取る。
その手に指を絡めて握り、キスをした。
「きもちーね」
「ああ」
「えっちもきもちよかったね」
千陽がからかうように振り向いて笑う。
上気した頬が愛らしい。
柔らかな頬に口付ける。
満足したようににかっと笑った千陽に、思わずつられて笑った。
「ふふー、幸せだなー」
嬉しそうに笑ったり、鼻歌を歌う。
その姿がとても可愛くて、愛おしくてたまらない。
「ん…、のぼせそう」
「上がるか」
「ん」
千陽を支えたまま風呂から上がり、洗面所で千陽をタオルで包む。
ワシャワシャと髪を拭いてから身体を拭き、自分のシャツを着せる。
顔を出した千陽が嬉しそうに背伸びをしてキスをくれた。
「ありがと」
すぐにズボンを履いて、千陽の髪にドライヤーをかける。
柔らかな髪が風に揺れた。
終わる頃にはうとうとし始めていて、歯磨きするように促す。
歯磨きをしながら船を漕ぎ始めた千陽に、思わず笑った。
「ほら、口ゆすいで」
「ん」
幼い子どものようにこくこくと船を漕ぎながら、千陽は口をゆすいだ。
隣で歯磨きをして終わったらお姫様抱っこをする。
腕の中で小さな妻は揺れに負けて眠りについた。
「はは、こどものまんまだな」
小さく笑って、ソファーに下ろす。
千陽はきもちよさそうに寝息を立て始める。
カーペットに横たわる。
柔らかい寝息を聞いていると、眠くなってきて目を瞑る。
「ん…」
優しく髪を梳かれる仕草に目を覚ます。
目を覚ませばいつのまにか目を覚ましていた千陽に、膝枕をされていた。
千陽は窓の方を眺めていて、起きたことに気づいていない。
もう一度目を瞑って、その優しい手に甘えた。
「雪が降りそうだね…、もうすぐ降るかも。そうしたら、すぐにまた春が来て、夏が来て…、ずっと駿さんの隣にいれるんだね」
優しい手は動きを止める。
それにつられて目を開いた。
指先で指輪を撫でる千陽が、目を覚ましたことに気づく。
ふわりと笑った千陽が、額にキスを落としてくれた。
「お腹すいた」
嬉しそうに笑ってそういう千陽の頬を撫でる。
その頬は柔らかくて、少し紅く染まっていた。
ヨッと掛け声をあげて立ち上がる。
千陽の頭を撫でて笑った。
「飯作るか」
「うん」
「立てそうか」
「…ん、腰に力が入んない」
「そうか、ソファーに座って待ってな」
そっと抱き上げてソファーに下ろす。
千陽の額にキスをした。
「またそうめん作るの」
嬉しそうに笑いながら聞いてくるその声に、笑って返事をする。
キッチンに立って昼飯を作り始めた。
リビングから聞こえてくる鼻歌が心地いい。
「駿さん」
「どうしたー」
「んーん。呼んでみただけ」
「そうか」
小さく笑いながら、ネギを刻んだ。
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