センセーの寝室
車に乗られてから鍵をかけて絶対に開けるなと言われた。
センセーはどこか行くのかちょっと待ってろと言ってからエンジンをかけエアコンを効かせてから車に乗らずにどこかに走って行く。
そのまま走ってどこかに行くセンセーの背中を見送ってから、背もたれに身体を預けた。


「疲れた…」

溢れた言葉とともに、身体がだるくなり始める。
センセーに言われた通り鍵をかけてから、目を瞑った。
エアコンの涼しい風が心地よくて、うとうとし始める。
このまま眠ってしまいたくなった。


「そういや、カバン…」

遠くなり始めた意識の中で眠ってはいけないと思いながらも抗えない。
センセーの車はバニラの香りでいっぱいだった。
その匂いはとても安心させてくれる。



コンコン、と窓がノックされる音で目がさめた。
少ししか眠っていないはずだが、スッキリしたような気がする。
音のなった方へ視線を向ければ、センセーが暑そうな表情で開けてと鍵の位置を指差していた。
欠伸をしながら、車の鍵を開ける。
センセーはすぐに乗り込んできてから、カバンを手渡してくる。
自分のカバンと、高級そうな革のカバン。
センセーの持ち物はシンプルだけれど、何もかも高そうだ。
噂では名家の次男であることを聞いている。
親の金で買ってもらったのかな、なんて、どうでもいいことを聞きながら、センセーのこめかみを流れる汗を眺めた。
バニラの香りが強くなる。


「カバン…」

「お前が体調崩したから送ることになったと伝えて回収してきた。ついでに俺も有休消化」

「ふ〜ん」

「…疲れたんだろ。寝てて構わない」

センセーの言葉とバニラの香りの安心感で、目を瞑ってしまう。
そのまま、うとうとと船を漕ぎ始めればそのまま睡魔に飲まれてしまった。



「起きろ」

頬を叩かれて目を覚ます。
目を覚ませば、口元を拭かれた。
よだれを垂らしていたようで、子どもだと言われているようで恥ずかしい。


「ほら、降りろ。歩けそうか」

センセーに言われた通り、車から降りる。
かくんと膝が折れてそのまま座り込んでしまった。
その様子を眺めていたセンセーがすぐに車から降りてきて、脇の下へ手を差し込み立たされる。
それからセンセーは俺に背中を見せて乗れ、と一言告げた。


「ん」

小さく返事をしてから、センセーの背中にしがみつく。
すんなりと俺を背負ったセンセーはカバンを俺にもたせてから車のドアを膝で閉めて鍵を閉めた。
これまた高級そうな駐車場をセンセーは歩いて行く。


「お前、自分を襲った奴にホイホイついてきてよかったのか」

「…あれは、しょうがないでしょ。先生はαだし、俺はΩ。ヒートなんだから。それに、センセーも気づいてるでしょ」

「あぁ」

「ね、俺がついていかない理由がない」

そう言って小さく笑えば、センセーがため息をついた。
センセーの体温はとても心地よい。
マンションだろう玄関に入り込み、オートロックを解除する。
エレベーターに乗ってから、センセーは一番最上階のボタンを押した。


「センセーお金持ち?」
「それなりに」

「買ってもらったの?」

「自分で買った」

「ちょっと教えてくれるのはカンケーなくなったから?」

そう尋ねれば、センセーは黙り込んだ。
エレベーターは静かに動いてやがて止まる。
センセーの背中に揺られて、エレベーターから降りるとすぐに綺麗な茶色のドアで止まる。
鍵を開けてから部屋に入ると、またバニラの香りを感じた。


「ん」

「薬の効果が切れてきたか」

「んー…、そうみた、い、またあっつく、なってきた」

「寝室行くか」

「ん」

玄関に降ろされた。
センセーの家は高級そうと思った通り広い。
革靴とランニングシューズが2足だけ置かれている。
高級そうで広いわりには物が何も少ないな、とぼんやり眺めていると、センセーに靴を脱がされた。
もう一度抱え上げられ、そのまま部屋の中に入って行く。
寝室にはいれば、バニラの香りはなおさら濃くなった。
センセーの寝室は広くて、ベッドも大きかった。
自分が住んでいるマンションも割と大きくて広いけれど、それの比でもないくらいだ。
ベッドに降ろされて、センセーを見上げる。
センセーの瞳は熱いくらいに欲情に濡れていた。


「せんせぇ」

口から溢れる俺の声は甘えるようにとろけていた。
バニラアイスのようにどろりと甘い声。


「ああ」

センセーの返事は、やっぱり熱を帯びていた。
その熱に飲まれるように、センセーに腕を伸ばす。
センセーのバニラの香りが気持ちよくて、思わず笑みがこぼれた。
ぎゅっとセンセーにだきしめれられてほっとする。
それからジュクリと身体の奥が濡れた。


「せんせ、気持ちーね」

そうつぶやいて、お互いに服を脱がしあい始める。
センセーがむしるように制服のYシャツを脱がす。
センセーの部屋はまだ冷房を効かせてないのか暑かった。
急いで脱がされた服はどこかに脱がされる。
体育館のギャラリーで抱き合った時よりも意識ははっきりとしている。
ヒートの波が緩いのか、センセーの顔が明確に見えた。


「お前の名前も知らないのに、なんてことをしてるんだろうな」

小さな声でセンセーはそう呟きながら、首筋、肩、胸にキスを落とす。
その唇から落とされるキスが、熱を徐々に強火にして行った。
スラックスのベルトを抜かれ、そのまま下着姿にさせられる。
その時にはもうセンセーの服を脱がせるほどの力は残っていない。
センセーはそのまま下着を脱がして、立ち上がったそれを口に含む。
濡れた音とともに、どうしようもないくらいの快感に飲まれた。


「っふあぁ…ッ」

気持ち良さに目がチカチカと瞬く。
センセーのアッシュグレーの髪を掴みながら、体を仰け反らした。
気持ちよくて、涙が溢れる。
よだれも溢れて、顔はぐちゃぐちゃになった。
センセーの指先がじんわりと濡れる入り口になったそこにゆっくりと入り込んでくる。


「せんせぇ、せんせ、きもち…、よ」

荒い息の中そう伝えれば、センセーの鋭い瞳が俺を見つめた。
その瞳に促されるように、激しい快楽に溺れて吐き出す。


「せんせぇ、も、」

お互いのバニラの香りに飲まれて、境界線がわからなくなって行く。
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