噛み痕
千陽の中に吐き出し続けて40分近く経ち、ようやく熱が軽く治った。
荒い息を吐き出しながら朦朧とする千陽を抱きしめて、頭を撫でる。
ぐずぐずと鼻をすすりながら、頭を撫でていた手を千陽に取られて好きにさせていると関節を甘噛みされた。
時折喘ぎを漏らすのは、余韻に浸っているからだろう。
うなじに残った番の印に口付けてから、熱くとろけた中から抜き出した。

「んあうッ」

甘い声が耳に入り、千陽の髪を撫でる。
抜いたそこはなかな閉じ切らず、クパクパと何度か呼吸しながら、白濁をこぼした。
思った以上に吐き出した欲望に、苦笑しながら千陽の耳に口付ける。

「ちょっと待ってな」

小さく身体を揺らした千陽から離れて、棚の中から薬を取り出す。
金内から処方された特効薬とアフターピル。
冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して千陽の元に戻った。
千陽は小さく身体を丸めながら、余韻に浸っている。
そっとその力が抜けた身体を抱き上げて、膝に乗せた。

「千陽、薬」

「…んん…や、あかちゃん、ほし、い」

千陽の言葉に、アフターピルを持った手が止まる。
産んで欲しい。
そう本能が訴えているが、千陽の身体のことを考えると理性が打ち勝つ。
番になるためには、奥深く子宮に精子を送り込みながらうなじを噛むことが必要になる。
そのために、避妊具を利用しなかった。

「千陽の身体が大人になってからな」

涙をポロポロとこぼす目元を甘く吸う。
それから、口にピルと水を含み、千陽に深く口付けた。
泣きながら飲み込んだ千陽を宥めながら、下腹部に特効薬をうつ。
自分の太ももにもそれを打った。
こどものように泣きじゃくる千陽を抱きしめて、なんども顔中に口付けた。

落ち着いて千陽が意識を失ってから、風呂に入った。
中のものを掻き出しながら、自分が吐き出した欲の量に苦笑する。
湯船に浸かり千陽の身体が温まったところで上がり、ちはるの身体を包んだ。
噛み付いて所々血が出ている肩にキスをし、下着とTシャツを着せる。
下着だけ履いてから寝室に入り、ベッドに横たわった。
腕の中で眠っている千陽にキスをする。
次に起きた時は、また熱にうなされているだろう。
今はゆっくり休もうな、そう囁いてから目を閉じた。

目を覚ませば、センセーが眠っていた。
後片付けは全部やってくれたようだ。
うなじが少しヒリヒリして触れると、噛み痕を感じる。
ぎゅうぎゅうに胸が締め付けられて苦しい。

「センセーっ」

ぎゅっと抱きついて、胸に顔を埋める。
センセーはそれでも眠っていた。
大好きなバニラの香りが心地よい。
気持ちよくて意識がなくなるくらいの時間。
耳元で何度もささやかれた愛の言葉を思い出して、嬉しくなった。
足を絡めて、しがみついて思う存分に、バニラの香りを嗅ぐ。

「…ん」

センセーが目を覚ました。
ヒートは落ち着いているようで、今は意識を保ってられる。
目を覚ましたセンセーを見上げれば、センセーが小さく笑った。
優しく名前を呼んでくれるセンセーに笑いかければ、キスをくれる。

「次起きたら、またヒートで大変だろうと思ったけれど…」

「思ったより、平気だったね」

「そうだな。特効薬も打ってるから、まだ楽なのかもしれない」

髪を撫でられて目を細めると、センセーがうなじを指先で撫でてくれる。
その指先が優しくて小さく笑った。

「駿さん、ありがと」

「…ん?」

「噛んでくれて、番にしてくれて、ありがとう」

そう伝えて、キスをする。
センセーに背中を撫でられて、笑った。
徐々に熱が上がっていくのを感じて、触れ合う唇も熱くなる。

「しゅんさ…」

「束の間の休息、だったな」

ふたりで額を合わせて、笑う。
センセーの瞳に欲望が灯るのが見えた。

「服着せた意味がなかったな。…次は着せない」

「ん、そう、だね…」

身体を覆った熱に荒い息を吐き出して、センセーの身体に指を這わせた。
お互いの熱に手を伸ばして、笑いながら唇を重ねる。

「千陽、愛してる」

優しく笑ったセンセーが、囁いてくれる。
その言葉がとても甘くて、ヒートになる前に食べたバニラアイスのようだった。
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