婚姻の儀
淡いオレンジ色の光が真っ暗だった礼拝堂を柔らかな暗さに変える。
黒い布で顔を隠したたくさんの人や魔物がいる中、真昼は深夜に手を引かれ歩いた。
真昼も同じように薄い生地に装飾が施された布で顔を隠している。
ふわふわとした黒い布で誂えられたドレスのようなものを身に纏い、真昼は婚姻の儀を迎えた。
中央の道をゆっくりと歩き、祭壇まで辿り着く。
隣の深夜が強く手を握ってくれて、真昼は微笑んだ。

心地よい暗さの礼拝堂の中、婚約の儀は行われる。
祭壇に立ったフミネが、目の前に並んだふたりに頭を下げた。
それに答えるように頭を下げる。
深夜が真昼の腰を抱き、フミネを見上げた。


「誓いの言葉を、伴侶に…」

澄んだフミネの声が礼拝堂に響き渡り、真昼は深夜を見上げた。
深夜と真昼の前に高めの玉座が現れる。


「王、黒薔薇の伴侶と永遠の時を過ごしますか」

「誓いを込めて。我が伴侶に永遠の足枷を」

深夜がまっすぐにフミネを見て言葉を口にする。
しん、とした雰囲気になり、深夜が繋いでいた手を離して真昼を椅子まで誘う。
そっと玉座に腰をおろし、深夜をレース越しに見つめた。


「黒薔薇の印を、ここに」

深夜が真昼の足元に跪いた。
真昼の細い脚を掲げ、つま先に口付ける。
すっとその唇が上にあがり、足首に口づけた。
細い脚を上げ、布の裾を託しあげる。
大輪の黒薔薇と白い肌が覗き、礼拝堂にいる魔族がはっと息を飲んだ。


「真昼、愛してる…」

真昼にしか聞こえない囁き。
深夜の声が聞こえ、真昼は小さく頷いた。
太ももにそっと口付けて、その黒薔薇の印から指を這わせていく。
足首に到達してから、深夜はアンクレットを手に取った。
孔雀色の石と金色の石が散らばった綺麗な装飾。
真昼の足につけて、深夜は足を下ろさせた。


「伴侶、王に付き従い、永遠の愛を誓いますか」

「…我が王に、永遠の愛の首輪を」

漆黒の髪を指先でそっと梳く。
俯いた深夜の露わになった首筋に口付けた。
降りてきたフミネに渡されたネックレスを深夜の首につける。
もう一度そこにキスをして、真昼は体を起こした。

大きな歓声がわきあがり、真昼を立ち上がらせて、深夜は細い腰を抱いた。
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