そばに
帰り道。
行きと同じように、深夜の馬に乗る。
帰りはゆっくりと低い位置を飛んでくれていた。
狭間の森の上空を飛ぶ。
綺麗な花畑になっていて、真昼は微笑んだ。
「こちらではご両親は参列しないんですね」
「真昼の世界では参列するのか」
「はい、両親と親族と、友人…くらいかな」
「ほう。…こちらでは、部下と国民のみでいたす。…あちらに帰りたいか?」
深夜の声に真昼は首を横に振った。
それから、真昼の腹に置いてある手を小さな手できゅっと握る。
大きな手からぬくもりが伝わってきた。
「いつか、あなたの隣に来るって知ってたんです」
「私も、そう思っていた」
「だから、両親には伝えてあるんです。僕はいつなのかは分からないけれど、姿を消すかもしれない。けれど、その時、僕は幸せになるから、心配しないでって」
「真昼」
深夜に優しく名前を呼ばれ、後ろを向いた。
少し切なそうな表情をした深夜に微笑みかける。
真昼の笑顔を見て、深夜はゆっくりと瞬きをした。
「父に言われました。お前が幸せなら、それでいい。その言葉に、僕はあなたの元へいけたら、きっと幸せになれると思いました」
「優しい父上だ」
「はい、尊敬しています。…だから、傍に居させてください」
握られた手に力が入り、深夜は優しく真昼の体を抱きしめた。
心地よい温度に真昼は目を瞑る。
深夜の体に自分の体を預けて、小さく鼻歌を歌った。
耳に入る心地よい鼻歌に深夜は微笑む。
見えてきた地面に深夜はゆっくりと馬を降下させた。
いつの間にか眠ってしまっていた真昼を抱きかかえる。
ゆりかごのような柔らかな揺れに、安心したような寝息を立てた。
「真昼様、疲れてしまったんですね」
「ああ。慣れない場所や人と会ったからな」
「ゆっくりお休みください」
「ああ。ロウ、フミネと一緒に馬を連れてってくれ」
「はい」
ロウとフミネが話しながら馬小屋へ向かう。
腕の中でぐっすりと眠る真昼を抱え、深夜は寝室へ向かった。
廊下のところどころに置かれている柔らかなオレンジ色の火が出迎える。
ゆらゆらと揺れる小さな火が浮かぶ廊下を進んだ。
大きな扉を開け、真昼をベッドに下ろす。
すうすうと穏やかな寝息を立てる真昼の隣に腰を下ろす。
さらさらとした髪を撫で、深夜も目を瞑った。
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