儀式の支度
あたりが少しだけ明るくなり、真昼は目を覚ました。
深夜が衣服を整えているのを見つけ、真昼は起き上がる。
「目を覚ましたのだな。…おはよう、真昼」
「おはようございます…。お仕事、ですか?」
「ああ、儀式の支度は私が進めなければならないから」
少しだけ寂しそうな表情をした真昼の頬を撫でる。
隣に腰をおろして、真昼の解かれた髪に指をさしこんだ。
「こちらに来た時よりもだいぶ髪が伸びたな」
「あ…、気付かなかったです」
「そうか。いつも、髪を結っているからか…。綺麗な髪だ」
真昼の濡れ羽色の髪をひと房掬いあげ、口付ける。
かあ、と頬を染めた真昼に、深夜はくすりと笑った。
「執務を終えたら、すぐにお前の元に戻る。…好きなことをしていなさい」
一度だけ髪を梳き、真昼に口付けた深夜は立ち上がった。
すぐに真昼もその後を追い、扉まで見送る。
もう一度優しい口付けを与えてくれた深夜に、行ってらっしゃい、と囁く。
深夜も答え、真昼の頭を撫でてから部屋を出て行った。
執務室に入ると、煌びやかな髪色をした男がソファーに腰をかけている。
首筋や、腕に宝石がはめ込んであることに気付き、深夜はその男の前に腰を下ろした。
「王、遅かったですね。フミネ様がお呼びに行きましたのに」
「すれ違って、別の用事を授けた。して」
「ええ、儀式での宝石はどういたしますか、今日はそのことをお尋ねに参りました」
男が鞄からいくつもの箱を取り出しながら、そう告げる。
深夜は男が開いた箱を覗き込みながら、品を定め始めた。
「金色のものと、色が変わる…深緑と青が主になった石はあるか」
「ええ。こちらには今ありませんが…。このような石がありますよ」
男が指で丸くかたどった中を覗く。
ふたつの宝石が輝くのを見た。
「…ああ、これだな。この石で頼む」
「わかりました。では、形はどういたしますか」
男の提案が紙に書かれたものを見る。
ひとつは指輪、他は色々な装飾品だ。
その中で、深夜はアンクレットのものを選んだ。
「では、この様に作らせていただきますね。後々、魔力を込めるのを頼みに来ますので…」
「ああ。また、頼む」
頭を下げた男が執務室を後にした。
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