理想郷
「神子の香りは本当だったんだな」

ベッドの上で、服を剥がされる。
数度と行われた凌辱に、真昼は声も出さず、遠くを見つめていた。
うつろな目は、悲しいくらいに何も写さない。


「…花の香りか」

首筋に鼻を擦りつける。
芳しいくらいの花の香りがした。
その香りを楽しむように、真昼の髪に指を差しこんだ。


「つまらないな…。塔に連れて行け」

ルカの冷たい声に、衛兵が真昼を抱えた。
歩くこともできないくらい、弱ってしまった真昼を塔へ連れていく。

冷たい塔に戻れば、もう元通り何もなくなってしまった腹に手を当てる。
ぬくもりを感じないそこは、真昼を傷つけた。
涙がぽろぽろと頬を伝い、嗚咽が漏れる。
男のことを思うと、もっと辛くなった。



「ルカ様、東の方で大きな地震が…。他の国でも同様に、天災が起きています」

部下の緊迫したような声に、ルカは衣類をただした。
外套を羽織り立ち上がる。


「まだ力が定まってないのか…?」

「どう、いたしますか」

「各地を見て回るように。まだ他に原因があるかもしれない」

ルカの言葉に、部下はすぐに部屋を出て行く。
ルカの居場所は、神官室から執務室へ変わった。
国王しか座ることのできなかった椅子へ、ルカはゆっくりと腰を下ろす。
零れる笑い声に、大きく背をそらした。


「もう少しで…、私の、思うままに!」

力が増した手のひらを掲げ、目を瞑った。
理想郷を思い浮かべながら。
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