赤く冷たい
塔に閉じ込められて、数週間。
まともな食事が与えられず、真昼の体は弱っていた。
せめてお腹の子のためにと堅いパンや冷たすぎる水を含んでいたが、栄養はたりず日に日に弱っていく。
身体が重たく、お腹だけは温めたくてぎゅっと身体を抱きしめた。
「も…、だめ、かも、」
悲しくなって来た。
やっとこの子を受け入れられる、そう思ったのに。
この子を抱きしめたい。
そう思ったのに。
もうこの心も折れてしまいそうだ。
ここで与えられる食事は、お腹の中の子と自分にとっては栄養が足りなかった。
「ごめんね、あのひとの腕に、あなたを…、」
真昼が命を諦めかけている時、牢屋の扉は突然開いた。
大きな音に驚き、ゆっくりと身体を起こす。
そこには牢屋を見張っていた男たちがいて、真昼は悲鳴をあげそうになった。
男たちは真昼に近づき、無理やり立たせる。
纏っていた毛布を落としてしまい、寒さに身体が震える。
真昼はそのまま男たちに牢屋から引きづられて行った。
引きづられてたどり着いたのは、あの部屋だった。
人国に初めて連れてこられた部屋。
豪華な部屋は嫌な香りが充満していて、気持ち悪くなる。
「…時が満ちた」
ルカの声を聞いて、真昼はそちらを向いた。
嫌な匂いは生臭い匂いであることに気づく。
どろどろと、鉄が錆びたような香り。
視線をさまよわせると、赤く染まったベッドが目に入った。
「…あっ…っ」
込み上げてきた嘔吐感に堪えるように口を押さえる。
どん、と背中を押されて、真昼はベッドを直視してしまった。
絡み合うようにした足。
小さなものと、大きなものが、愛し合うように絡みついている。
「期が熟したのです。あなたには役に立ってもらいますよ」
ルカに手を取られ、ベッドが見える位置にあるソファーに投げられた。
お腹をかばう様に倒れこみ、真昼は小さく呻く。
背中が痛み、唇を噛んだ。
ルカは真昼を連れてきた男に腕を押さえるように命令した。
頭の上に腕を掴み押さえつけられる。
ぎゅっと頬を掴まれてベッドの方へ、顔を向けさせられた。
「なんて、こと…、なんて、ことを…っ」
彼らの腹部あたりに二本の剣が突き刺さっている。
ポタポタと垂れる血液。
カーペットは黒く染まっていく。
真昼は無残な姿になってしまった人たちに涙が零れ始めた。
「こんな、こと、どうして」
ポロポロと溢れる言葉に、ルカが大きな声で笑ったのが聞こえた。
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