昼間の少年
「げほっ…げほっ、」
息苦しさから逃れて、目が覚めると違和感があった。
どこか身体がふわふわと軽いような。
それから、熱っぽさがある。
死んでしまったのだろうか。
ここは死んでしまった後の世界なのだろうか。
そんな思いがよぎり、自分の腕を抓ってみる。
痛みを感じて現実であることを知るのは夢か、と、ぼんやりと考えてしまう。
昼間に痛めた足がまた痛み出したが、それを少し我慢して立ち上がった。
どこに来てしまったのだろうか。
気になってしまい、あたりを見てこようと思った。
「…柱?」
4本の柱がに囲まれている。
真昼が落ちたそこは泉の真ん中にある神殿のような場所だった。
空を見上げると、薄暗い夕焼けの色をしていた。
周りを見渡すと、真っ暗な森が泉を覆っている。
「…あの湖に、神殿なんて、あったけ」
記憶の中の湖に、神殿なんてない。
やっぱり死んでしまった後の世界なのだろうか。
真昼は少しだけ怖くなって、腕をさすった。
「ん…」
声が聞こえてきて、真昼はそちらに視線を向ける。
金髪の少年が横たわっていた。
「…ううん、」
もぞもぞと少年が動きだして、起き上がった。
起きた少年は、真昼を見ると、立ち上がって腕を掴む。
強い力に、うめき声が漏れた。
「お前、誰だ!」
「…あ、」
起き上がった少年の強い力に真昼は、浮かび上がった涙をこらえようと唇を噛む。
答えろよ、とせがまれたところで、真昼、と小さく呟いた。
少年は答えが聞けて安心したのか、真昼の腕から手を離す。
「ここどこだよ」
「わ、わかんない、起きたら、ここにいて…」
「役に立たねーな!」
舌打ちとともに告げられた言葉に俯く。
いきなりそんな風に言われて、涙がぽたぽたと零れ真昼は嗚咽をこぼした。
いきなりこんなところに来てしまって、不安の中ひどいことを言われて切なくなる。
泣いちゃダメだと思っていても涙がこぼれてしまった。
「何泣いてんだよっ! うっとおしいやつだなぁ」
再度聞こえてきた舌打ちに、びくりと体を震わせる。
少年のほうを向いたら、少年が体をそばにきて匂いを嗅いだ。
ビクリと肩を揺らして仰け反ると、少年はそれに構わずそばに寄ってくる。
「…ん? なんかお前、良いにおいがするな。なんか持ってるのか」
「な、何も持ってない…」
「…ふうん、まあいいや。森のほう見て来ようぜ」
腕をぐいぐいと引っ張られて、神殿と森の方へつながっている飛び石を渡る。
ひねった右足で着地するたびにズキズキと痛みが走った。
prev |
next
back