勉強
「リリーは物分りがいいな」

学校が休日の今日、リリーはコマクサのもつ保健室の準備室に来ていた。
Sクラスに編入するにはまだ知識が浅く、難しいため、コマクサから勉強を教えてもらっている。

「先生の教え方が上手だから」

「ありがとう」

「勉強、嫌いじゃないかも」

「それは教えがいがあるな」

嬉しそうに笑うコマクサに、リリーも小さく笑った。
準備室のソファーの上でオトメがペレグリナに遊んでもらっている。
少し疲れたのか、肩が痛い。
うんと背伸びをしてみれば、コマクサが立ち上がった。

「紅茶を入れようか」

「休憩?」

「私も少し休みたいからな」

「…ごめんね、疲れた?」

「君に教えることは疲れることじゃないよ。何事も休憩が必要ということだ」

「難しいからよくわからない」

首をかしげたリリーに笑いながら、コマクサは紅茶を入れた。
ラミも食べられるお菓子を出してあげると、オトメが嬉しそうに鼻を鳴らす。

「そういえば、ダリオとルキーノは何をしているの」

「ああ、言っていなかったのか。彼らはこの学園の警備とかを行う警備監視委員会に所属していてな、そちらの仕事を行っているよ」

「そう…。その委員会は大変なの?」

「ああ、大変だろうな。学園の島全体の警備と監視、それから悪いことを行ったものに対する罰則なども担っている。それに、ルベルムが委員長、ルキーノが副委員長を務めているから、なおさら大変だろうな」

「えらいね」

「次世代の国を担う子達だからな。もともとあの委員会はリリウム国とその同盟国が所属する委員会だから、ルベルムが背負うものは他の者とは違うかもしれない」

「…ダリオって、とてもすごい人なんだね」

感心したように頷きながら言うリリーに、コマクサは笑った。
表現の仕方がとても幼くて、愛らしい。
ぽんぽんと頭を撫でてやれば、リリーは嬉しそうに目を細めた。

「まあ、ついでに教えると、ルベルムの委員会とはまた違った生徒会という委員会もある。デッセン国の話は聞いたか?」

「うん、ダリオにとっては悪い国」

「ああ、うまく覚えたな。デッセン国やその同盟国の出の者が所属するのが生徒会だ。学園の運営の一部を任されている。一つの国として考えれば、生徒会が国を動かす、委員会が国を守るといった形でこの学園は成り立っているんだ」

「…難しいけど、なんとなくわかった」

「おお、えらいえらい。補足に、生徒会と委員会は互いに制止力も持ち合わせているから、敵対している国同士でもつぶしあいにならないんだ」

よくわからない、といったような表情を浮かべたリリーにコマクサは小さく笑いながら、お菓子を差し出した。
オトメもペレグリナもお菓子を食べ上げてまた遊びに夢中になっている。
リリーはコマクサの説明を聞いたあと、ルキーノのことを思い出した。
ルキーノ、昨日疲れた顔をしていたな。
思い浮かべた顔はため息をついて、ソファーにぐったりとしていた。

「ルキーノも大変?」

「そうだろう。ダリオはなかなか疲れを見せないだろうが、ルキーノはわかりやすいだろうな。…まあ、彼も大変だろう。ダリオの補佐を行っているからな」

「そっか。ルキーノも甘いもの食べれば元気になるかな」

「…寮で疲れた顔してるのか」

「うん。ダリオもちょっと元気ない。ダリオは甘いものが苦手だから、何をしたら元気になる?」

「そうだな、お前がニコニコしてれば元気が出るんじゃないか?」

「なあに、それ。変なの」

おかしそうに笑ったリリーに、コマクサはほっとした。
出会った頃の動かない表情から、笑顔を浮かべられるくらいにはここに馴染んでくれたように見える。

「リリーも疲れたらすぐに周りに伝えなさい」

「はい、先生」

「私とふたりの時はコマクサで良いよ」

「ん、わかった。コマクサ」

紅茶を飲んで、お菓子を美味しそうに食べるリリーに、コマクサは頬が緩むのを感じた。
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