朝食
「リリーおはよ」

そばに寄ってきたルキーノに、リリーも挨拶をした。
ルキーノの肩にはヨウランがとまっている。
ヨウランにも挨拶をすれば、ロジーがいないことに気づく。


「…ダリオの、子はどこ」

「ああ、ロジーか? ロジーなら今散歩に出ている。すぐに戻ってくるだろ」

「ロジーはダリオと違って、人懐っこいから、すぐにどこか行くんだ」

「そうなんだ」

「オトメちゃんもおはよう」

そばに寄ってきたルキーノが腰を低くし、オトメを覗き込んだ。
オトメは小さな鳴き声をあげて、リリーを見上げる。
リリーが困ったように首を傾げればルキーノが笑った。


「まだダメみたいだね」

「…ごめんなさい」

「いや、いいんだ。リリーの警戒が強ければ強いほど俺たちは安心できるから。ね、ダリオ」

「あぁ」

「さ、お腹すいただろ。リリー、みんなで朝ごはんにしよう」

コクリと頷けば、ルキーノが椅子を引いてくれた。
腰を下せば、すぐに食事が運ばれてくる。
ルキーノの運ばれてきた食事は、どれも見たことのあるものだった。


「食べられないものとかある?」

「んーん、大丈夫そう」

「そっか。それなら良かった。たくさんお食べ」

「ん、いただきます」

渡されたフォークで食べ始めれば、すぐにお皿の中は空っぽになる。
驚いたルキーノがすぐにおかわりを持ってきてくれた。


「リリー、よく食べるねえ」

「そうだな。量は足りるか」

「一応、昼食も用意していたから、それを出せば足りる」

「…それにしても…」

「よく食うな。俺たちの倍は食べてるぞ」

黙々と食事をするリリーの皿はまたすぐに空っぽになっていて、ルキーノが立ち上がりおかわりを入れる。
すでにダリオやルキーノの三倍に達しそうな量に、ふたりは思わず笑った。
あの大量の料理は小さな身体のどこに隠れたのだろうか。
ようやく動く手の速さが緩くなり始めて、リリーがハッとしたように顔を上げた。


「…ご、ごめんなさい、たくさん、食べて…」

かあっと顔を真っ赤に染めたリリーは恥ずかしそうに、顔を背けた。
それからフォークを置いて、膝の上に手を置く。
そこには丸くなって眠るオトメがいて、リリーはオトメの背中を忙しくなく撫でた。
恥ずかしそうに小さくなる様子にダリオとルキーノは顔を合わせて笑う。


「たくさん食べていいんだよ。リリー、心ゆくまで食べて。まだまだ作ってあるから、たりないようならいくらでも作る」

「いいの」

「ああ、ルキーノの飯は美味いだろう」

「うん、とても。ごめんなさい、まだ、食べたい」

「そうか、ルキーノ、全部持ってくるか」

「そうだね。ちょっと待っていて、リリー」

とろけるようなルキーノの微笑みに、リリーも頬を緩ませた。
ありがとう。
小さな声が聞こえてきて、ふたりはもう一度笑った。
運んできた食事を並べて、紅茶を入れる。
リリーが頬を染め嬉しそうに食事をする様子を、ふたりは眺め続けた。
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