朝
「…あ…」
目が覚めてリリーは辺りを見渡した。
ぼんやりとする頭で辺りを見渡しても、ここがどこなのかはわからない。
大きな部屋だ。
部屋の中は本棚があり、床にも溢れたたくさん本が積まれている。
壁には大きな大剣が立てかけられていた。
「…どこ…、オトメ…?」
「プウっ」
鳴き声が聞こえてきて、ブランケットを剥がせばそこに小さなうさぎがいた。
オトメの姿にホッとして、リリーはオトメを抱き上げる。
「ここにいたんだね。いなくなっちゃったかと思ったよ」
そっとオトメの額にキスをする。
オトメは嬉しそうにもう一度鳴いた。
一息ついていると、ノックの音が聞こえる。
小さく返事をすればドアが開いた。
「起きたか。おはよう」
「…うん、おはよ。あの、ここ、どこ…」
「ここは寮の俺の部屋だ」
「寮…」
「昨日話したことは覚えているか」
「うん、グロンオム学園の、寮…?」
「そうだ」
そばに寄ってきたダリオはリリーの隣に腰を下ろした。
チョコレートの香りが鼻をかすめる。
甘い香りが空腹を誘った。
隣に座っているダリオの甘いチョコレートの香りはとても心地よい。
そっと手を伸ばして、ダリオの膝に触れた。
驚いたダリオがリリーを見つめる。
「…リリー、どうした」
「ん、お腹減った」
「あ…、ああ、そうだな。ルキーノが朝食を作ってくれている。一緒に食べようか」
「うん」
ダリオの膝に乗せた腕を引かれ、リリーは立ち上がる。
膝の上に乗っていたオトメもぴょんっと飛び降り、後からついてきた。
ダリオの大きな手はとても暖かくて、気持ち良い。
「…僕が…、あ、あの、ダリオはどこで寝たの」
「ん? ああ、これから行くところで寝ていた」
「…ごめんなさい」
「なぜ謝るんだ?」
「だって、あなたが寝る場所を僕がとってしまったから」
そういったリリーは足を止めた。
ダリオも足を止め、振り返る。
俯いたリリーの頭に大きな手が触れて、優しく撫でた。
「ゆっくり眠ってもらいたかったから、そんな顔するな」
「ん…ありがとう」
掴まれていた腕が離されて、少し寂しいと感じた。
すぐに手を伸ばしてダリオの手のひらに触れて指を絡める。
キュッと握ればダリオが驚いたように目を見開いて、リリーを呼んだ。
「…あ、ごめんなさい」
そっと手を離して、後ろでキョトンと首を傾げていたオトメを抱き上げる。
ダリオの手はとてもあったかくて、リリーの心を満たしてくれるような気がした。
もっと触れていたい。
リリーの空っぽの心の中を少しだけ埋めてくれた。
ぎゅっとオトメを抱きしめる。
「…ルキーノが待ってる、行こう」
優しいダリオの声に頷いて、リリーは大きな背中を追いかけた。
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