ふわふわの神様
揺れている。
ふわふわ、ゆらゆら。
リリーの身体はまた輪郭をなくし、解けていた。


「やあリリー。この間ぶりだね」

「…、誰」

「そうか。君は覚えていられないのか。ここのことは。僕は神様だよ」

「神様?」

白いふわふわの神様。
リリーの周りをぐるりと回って笑い声をあげた。


「そうだった、そうだった。君は覚えていないんだった」

「…なに、僕はどうして、身体がないんだろう」

「教えてあげないよ」

「神様って、意地悪なの?」

「どうだろうね」

ぐるぐる回って真っ黒な空中を飛んで行く神様。
神様が飛んで行った後ろにはキラキラと光の粉が舞っていた。


「リリー、運命は決められた」

「運命?」

「まだ早いのかな。君の目の前には3人の魅力的な人が現れたでしょ」

「わかんない。神様、意地悪」

「どうだろうね」

先の見えない会話に、リリーは小さくため息をついた。
ふわふわ飛んでいる神様に意識もふわふわと飛んでいきそうになる。
世界はいつもゆらゆらと揺れ、不安定だった。


「ねえ、僕はどうしたらいいのだろう」

「どうしたらいいんだろうね」

「わかんないんだもん」

「わかんないんだもんね」

「神様なのに、何も知らないの」

「どうだろうね」

神様はからかうように、リリーの鼻先をくすぐった。
小さく呻くと、神様は笑う。
その笑い声が空高く響いた。


「わかんない…。怖いよ、知らないことは」

「でも優しかったでしょ」

「誰が?」

「誰だろうね」

答えをくれないその声にリリーはもう一度ため息をついた。
この世界ではリリーの知っていることは何もない。
知っているのは…、分かっていることは、リリーという名前だけ。


「リリー、君の運命、君が決めるんだよ」

言葉を紡げなくなってくる。
神様の言葉はまだ聞こえていた。
どこかで聞いた言葉だった。
消えてしまっていた身体がまた編まれるように、痛みを伴って戻り始めて行く。
真っ暗な世界はゆらゆらと揺れていた。
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