お泊まり
買ってきたデザートを冷蔵庫の中に入れながら、中の飲み物を眺める。
それから自分用に壱琉が買いだめておいたカフェオレを出した。


「いちー、なに飲むー?」

「コーヒー」

「ん」

壱琉のコーヒーも取り出してむくが置いていったコップの中に注ぐ。
ふたつのコップを持って、リビングのソファーに向かえば壱琉がちらりとむくを見た。
その視線に首を傾げれば、壱琉は小さく笑う。


「なに笑ってんの。変なの」

隣に腰を下ろしながらそういえば、壱琉はもう一度笑った。
テレビをつけて、ぼんやりふたりで眺める。


「いち、勉強教えて」

「今日はなんの宿題が出たんだ」

「数学」

「むく数学嫌いだもんな」

「んー。方程式嫌い」

ゴロンと体を倒したむくは壱琉の膝の上に頭を乗せる。
うんと手を伸ばすと、壱琉がその手を取った。
それから手のひらをぎゅっと親指で押したりマッサージしてくる。


「勉強する気ないだろ」

「だって明日土曜なんだもん」

「まあな。あとで少しでも目を通しておけよ。お前も汰絽と同じで毎日勉強しないとできないだろ」

「んー」

壱琉の膝の上はゴツゴツしてて寝心地は悪い。
それでもそこはむくにとって一番居心地のいい場所で、寝転がっていると少しずつ眠たくなってくる。
最近は寝つきが悪くて睡眠不足がずっと続いていた。
このままゆっくり眠ってしまいたいとすら思う。


「むく、寝るなら風呂入ってから」

「うん…、お風呂連れてって」

「はいはい。甘えん坊だな」

「だって、眠いんだもん」

起き上がったむくを抱きかかえる。
抱きかかえられたむくはぎゅっと壱琉の首に捕まり、眠いとつぶやいた。
お風呂場に着くと、降りたむくはのそのそと服を脱ぎ始める。


「寝室の冷房つけてから入るわ」

「ええ〜、一緒に入るのやだ」

「なんでだよ」

「だってもう中学3年生だよ、ひとりで入るのが当たり前だよ」

「よそはよそ」

そういった壱琉はむくの頭をわしゃわしゃと撫でてから、出て行く。
先に風呂場に入ったむくは風呂の蓋を開けて、窓の方をおいた。
シャワーを浴び始めると、すぐに壱琉が入ってくる。


「むく、頭洗ってやるよ」

「いち、本当にむくの頭洗うの好きだね」

「ああ、好きだよ」

頭を洗われるのは好きだ。
壱琉とお風呂に一緒に入るのは少しだけ恥ずかしい。
それでも、一緒にいれる時間が多ければ多いほど、ホッとする時間が増える。
この時間がとても好きなことには変わりはない。


「いち、背中も洗って」

後ろで嬉しそうに笑う声が聞こえてきて、むくもつられて笑った。
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