どんなとこ
「あのね、今日壱琉の学校のオープンスクール行くでしょ。ゆうちゃんも一緒に行きたいんだけどいい?」

「俺は構わないけれど、結之はそれでいいのか」

「うん。ゆうちゃんも元々お母さんと行く予定だったんだけど、お母さん行けなくなったから一緒に行きたいって」

「わかった。車出してやるから、着く頃に連絡すると伝えておいてくれ」

「うん。急なのに、ありがとう」

「むくのためなら」

そう言ってポンポンと頭を撫でられて、むくは小さく笑う。
この仕草をされるのも最近では子ども扱いされて嫌だとも思わなくなった。
中学の制服を着込んでいると、壱琉がむくの髪を梳かして直す。
優しい手つきが心地よくて、むくは壱琉をじっと見つめた。


「どうした?」

「んーん。別に」

「準備できたか」

「うん。お願いします」

「お願いされました」

鏡でもう一度身支度を確認してから、壱琉に背中を押されて部屋を出る。
初めて行く高校は、ドキドキして隣に立つ壱琉がいてくれてよかったと心から思った。
車に乗り込んで、壱琉に笑いかけると優しく笑っている姿が見える。


「よし行こうか」

そう言って出発した車の中で、緊張する体を落ち着けようとむくは時々壱琉をみた。


結之を車に乗せて学校に着いてから、保護者と生徒で別れた。
後ろに座っている壱琉を時折見れば、ひらひらと手を振って笑っている。
むくもそれに振り返してから、隣に座った結之に視線を移した。


「ね、制服かっこいいね。やっぱりブレザーがいいよね」

「そうだね。春風は紺色のブレザーに水色のYシャツでズボンがグレーだっけ」

「そうそう。東方は黒いブレザーに灰色のYシャツ。珍しいよね」

ふたりで話しているとオープンスクールを取り仕切る教員が来たようだ。
生徒が静かになったのをみて、教員が話し始める。
その話を聞きながら、むくは壱琉が他の教員と話している姿を見つけた。
親しげに話すように、ソワソワしていると結之に膝を叩かれる。


「移動だって」

「あ、うん」

立ち上がって着いて行くと、学校の中を案内された。
校舎の中はとても綺麗で、様々な部活の声が聞こえてくる。
どの生徒も輝いていて、壱琉も高校生の時こんな風に生活していたのかな、と思った。


「なんかいい感じだね」

こっそりと隣の結之に囁けば結之も同じようにうなづいた。
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