もっと知りたい
「あのね、お父さん」

「どうしたの?」

リビングのソファーでくつろいでいる父の隣に座って、むくは持ってきた資料を渡した。
それは汰絽や風太が通っていた高校のパンフレットと、壱琉の通っていた高校のパンフレット。
やりたいことはまだわからない。
それでも、ちゃんと勉強したいという気持ちもあって、ふたつの高校を選んだ。


「春風と、東方か。どっちも学力高い所だし、進学クラスもあるからいいかもしれないね。それに春風は汰絽くんと風太が通ってたから親しみやすいし、東方は壱琉くんが通ってたし今も交流ある先生方がいらっしゃるから東方もいいね」

「うん。…どっちにしようかまよってる」

「汰絽くんと風太、壱琉くんに話聞いたり、一緒にオープンスクール言って見たりしたらどうかな」

「うん。そうする。…ここのふたつの、どっちかでいい?」

「…お父さんはどこでもいいと思っているよ。むくくんが決めたなら」

「ありがとう」

父にそう伝えると、頷いた父はパンフレットを眺める。
むくくんももう高校生か、と呟いた父に、まだ7月に入ったばっかりだよ、と笑った。



お風呂に入ってから、風太と汰絽にお願いをして卒業アルバムを見せてもらうことになった。
風太の部屋で見ることになり、汰絽と一緒に風太の部屋のドアをノックする。
風太はすぐに部屋に入れてくれて、3人はローテーブルを囲む。
汰絽と一緒に持ってきたお茶を入れてから、まずは風太の卒業アルバムを開いた。


「俺あんまり写ってないよ」

「そうでしたね」

「いいよ、風太の高校の時の写真見たいー」

そういうと風太は笑いながら卒業アルバムを開いた。
写真の中には杏の姿もあって、むくは思わず笑ってしまう。
杏は風太といつも一緒にいるのに、卒業アルバムにはたくさん写っていた。


「これはなんの行事?」

「これは学科混合交流会だな。うちの学校色々学科があるから年に一回、生徒会主催で全学科の交流会があるんだよ」

「へえ〜、同じ学年の人と?」

「そうそう。他の学科の生徒と進路についてとか、色々話す会」

写真の中には風太は写っていないけれど、白衣を着て実験をする姿の生徒がたくさんいて少し楽しそうに見えた。
数学は苦手だけど、この理科の実験は楽しそうだ。


「そうなんだ。風太は特進理系? たぁちゃんは特進文系?」

「そうだよ。特進文系は国語、英語、あとフランス語か中国語が選べて、年に何回か交換留学生が来たり、向こうに行ったりして、いろんな世界を知ることができるかな」

「へえ、勉強大変だった?」

「楽しかったよ。今もいらっしゃる先生が、とっても面白い授業してくれるから。あとは歴史、地理にも強くなれるよ」

「ふむふむ」

進路ノートにメモをしながら汰絽の話を聞いていると、風太が高校生の時に使っていた教科書を見せてくれた。
全部教科書に書き込んでいたみたいで、教科書はメモがたくさん書かれている。
汰絽も持って来てくれたノートも見せてもらうとびっしり書き込まれていて、むくは思わず感嘆の声を漏らした。


「特理は数学と理科、あとは天文学とか理系の科目なら好きに取れる。特文みたいに交換留学生とかは来ないけれど、授業が充実してると思う。ただ勉強は大変だけどな」

「苦労した?」

「俺はそんなに苦労はしなかった。他の生徒が大変そうだった」

「さすが風太」

そう言って笑うと、風太も同じように笑った。
それから、汰絽のアルバムを開く。
汰絽のアルバムにはたくさん汰絽と好野が写っていた。
楽しそうに交換留学生と一緒に笑っていたり、楽しそうに行事に参加していたりした。
汰絽のアルバムを眺めている風太は嬉しそうに眺めている。


「あのね、むく、春風か東方に行こうと思う」

「春風か東方なら手堅くていいと思うよ。親父には話した?」

「うん。お父さんもいいって」

「そうか。ならいいと思う。俺は」

「汰絽もいいと思うよ。今度一緒にオープンキャンパス行こうか」

「うん。ありがとう」

汰絽の言葉に頷いてから、ノートをしまう。
そろそろ眠ろうかと風太の言葉を聞いてから、おやすみの挨拶をした。
風太と汰絽はまだお話しするみたいで、ふたりはむくに手を振る。
そんなふたりに手を振り返してから、むくは部屋を出た。
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