幸福な朝
ベッドに入って、壱琉の方を向く。
壱琉も同じようにむくの方を見ていた。
優しい瞳が眠たそうに時々隠れる。
そんな様子を見ていると、むくもゆっくりと眠たくなった。


「おやすみのキスして」

低く耳元で囁かれ、頷いて下顎にキスを送る。
壱琉も額にすぐキスをくれて、目を瞑った。
何も音がしない部屋の中で、ふたりは互いに寄り添って眠る。
とても温かい壱琉の腕の中は心地よくてむくは頬が緩むのを感じた。


「いち…」

好きだよ。
心の中で囁いて、深い眠りに落ちていった。


「おはよう、むく」

優しいキスを頬に感じて、ゆっくりと目を覚ます。
目の前には壱琉が笑っていて、ゆるゆると笑った。
ぎゅっと腕を伸ばすと壱琉が体をかがめてくれて、むくは抱きつく。
抱き上げてもらって、額を肩口に寄せた。


「おはよぉ、いち」

ぼんやりとした意識の中にゆっくり笑っていると、優しいキスが唇に近い場所に送られる。
その気持ち良いキスにむくはとろとろに解けるような気持ちになった。
むくも同じ場所にキスを送り笑う。
寝起きのむくは時々まだ意識がはっきりとしていなくて、とても甘えたになる。
その姿があまりにも可愛くて、壱琉はむくをぎゅうぎゅうに抱きしめた。


「俺の可愛い赤ちゃん、可愛いよ」

「ん、もっと言ってぇ…」

「ああ、可愛いよ。今日もずっと一緒にいたいくらいだ」

「うん、むくも…、いち」

まだ起きて準備をするには早い時間で、壱琉はむくの髪を撫でて、もう一度ベッドに横になる。
それからもう少し眠ろうな、と額にキスをすれば、むくはこくこくと頷いて目を閉じた。
ふたりはもう一度、目を瞑り眠る。
互いの体温はとても心地よくて、幸せだった。



「ん…、よく寝た…」

目をさますと、隣で壱流がぐっすり眠っている。
よく眠っている姿にホッとして、むくは小さく笑った。
頬にキスを送り、ベッドから出る。


「ご飯、用意するね」

時間に余裕はあり、むくはキッチンで簡単な朝食を用意した。
トーストを焼いて、スクランブルエッグとサラダ、昨日の残りのスープを用意してから、もう一度寝室へ戻る。
眉間にしわを寄せている壱流をみて、むくはまた思わず笑った。
壱流の眉間に口付けてから、耳元にキスを送る。


「おはよ、いち、朝だよ」

「…、もうちょっと」

「ダメだよ、今日お仕事でしょ」

「おはようの挨拶して」

「ん」

壱流が手を伸ばしてきたのを見て、むくは笑いながら腕の中に入った。
それから壱流の顎先にキスをして、起きて、と囁く。
キスをもらった壱流は、むくを抱いたまま起き上がり、小さく唸った。


「おはよう、俺の可愛い赤ちゃん」

「うん、おはよ」

「むく、よく寝れたみたいだな」

「よく寝れたよ」

「よかった。むくの体温かくて気持ちいな」

「ん、ね、もう起きなきゃ。パン焼いたよ、あとスクランブルエッグも作ったの。サラダも」

「そうか、それは急いで食べないと」

「でしょ、だから早くリビングいこ」

むくが促すように壱流の膝から降りて手を引く。
その可愛い手に応えるように、壱流は笑って立ち上がった。
テーブルにつくと、むくがすぐに麦茶を入れて持ってくる。


「ね、たぁちゃんに教えてもらったの。スクランブルエッグ」

「そうか、いい香りがする」

「うん」

「いただきます」

「いただきます」

挨拶を交わしてから、ふたりは朝食を食べ始める。
トーストにスクランブルエッグをつけて食べると、ほのかな甘みと、塩味が美味しい。


「うまいよ、むく」

「よかった。壱流ちょっと塩味が効いたのが好きだから、ちょっと塩多めにしたけど、しょっぱくない?」

「ああ、俺の好きな味だよ」

「そっか…っ」

嬉しそうにとろけた笑みを見せたむくに、壱流も嬉しくなり微笑んだ。
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