どうしたいの
いつものコンビニで待ち合わせて、壱琉の部屋にやってきた。
お菓子もいつもより少し高めのお菓子を買ってもらい、あとは夕飯と眠るだけの準備をする。
温かいお風呂にはいつもどおりふたりで入った。
お風呂の中でゆっくりとしている時、心地よくて眠ってしまいそうになって壱琉に笑われてしまった。


「眠気は覚めたか」

「うん。…お風呂気持ちかったんだもん」

「それは良かった。さて、夕飯できたから食べるか」

「ん」

ダイニングテーブルに並べられた夕飯を見て、むくはわあっと声をあげた。
海鮮サラダとむくの大好きなコーンポタージュ、キノコの和風スープパスタが並べられている。


「なんか、手が込んでるね。今日」

「そうか?」

「うん。なんかいいことあったの?」

「いや、特にはない。ただ、今日はむくと一緒にいれると思ったらつい、な」

「うっ…っ、」

かあっと頬が熱くなるのを感じて、むくはすぐに顔を壱琉から背けるように俯いた。
テーブルの上にある夕飯が、壱琉の思いそのもののようで胸がぎゅうっと締め付けられる。
ありがとう、と小さく呟くと、嬉しそうに笑う声が聞こえた。


「食べようか」

優しい声に促されて、ダイニングテーブルにかける。
いただきますと手を合わせて、夕飯に手を伸ばした。
どれも美味しくて、口に運ぶたびに嬉しくなる。


「美味しい…」

「どうも、良かった」

「ん、あ、あのね…、相談したいことがあるんだけど」

「ん? 今でもいいのか」

「うん、今がいい」

美味しいご飯を食べたら、壱琉に相談したいことを思い出した。
そばにいたい、その思いが今ご飯を食べたら溢れ出してきてしまった。
壱琉をまっすぐに見つめれば、その思いに応えるように壱琉は持っていたフォークを下ろす。


「い、いや、食べながらでいいの。ほんとにちょっとした相談だから」

「そうか」

「あのね、今、進路希望調査票、出す時期なんだけど、」

「ああ、そうだな。汰絽から聞いてるよ」

「…そうなの?」

「ああ」

コップの中の麦茶を飲んで、壱琉はむくに頷いて見せた。
それからむくのコップの中に麦茶にいれてから続きを話すように促す。
むくは少し緊張したようにいれてもらった麦茶を飲んでから、小さく口を開いた。


「進路希望、どうしようかと思って…」

「高校には行くんだろう」

「う、うん」

「どこに行くか迷ってる?」

「そうなの。…やりたいこともないし、でも、でもね」

口からその先がこぼれ落ちてしまいそうで、むくはぎゅっと手を握った。
それから、もう一度麦茶を飲んで落ち着く。
スープパスタが冷えてしまう前に食べなきゃ、思いながらも、ムクは話を続けた。


「おうちから遠くない高校がいいかなって思ってる…」

「…そうか。それもひとつの動機だしな。いいと思うよ。お前の学力なら汰絽や春野が通ってた学校の特進も夢じゃないし、そこに通っていればどこの大学だって入れる」

「そ、そっか。うん、そうだよね…。ちょっと調べたりしてみる。他に、いいとこってあるかな」

「俺の母校も、隣町だがバスですぐに行ける距離だから遠くはないな。俺のところだったら、知っている先生がいるから紹介できるよ」

「ありがと、考えてみる」

壱琉に話してホッとした。
大丈夫、自分で決められそうだ。
少しでも壱琉のそばにいたい。
だから、決められる。
一枚の紙でモヤモヤしていた気持ちは少しの勇気を振り絞って相談したら、何処かに行ってしまった。


「壱琉に相談して良かった」

そう行って笑えば、壱琉も嬉しそうに笑ってくれた。
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