いつの間にか梅雨
「わ、雨すごい」

窓の外を見ていると、隣に結之がやってきた。
結之の言葉の通り、雨がざあざあと降っている。
外の景色が薄暗いのは、夏に向けての準備からか。


「母さんに迎えにきてもらおうかな」

「ふふ、ゆうちゃん時々怠け者になるよね」

「まあね。むくも乗っていく?」

「ううん、今日は、迎えにきてくれるから」

「そっか。よかったね」

結之の方が嬉しそうな顔をして、むくに笑いかける。
そんな表情にむくも思わず笑ってしまった。
携帯電話が震えて、すぐに開く。

コンビニで待っているから。

短い文面にまた笑みがこぼれて、隣で窓の外を眺めていた結之がもう一度笑った。


「むく、仲直りしたんだね」

「え?」

「壱琉さんと」

「…うん」

少し恥ずかしくて、結之から視線をそらす。
自分の席に腰を下ろして、頬杖をついた。


「もう梅雨入りしたんだね。早いねえ」

「そうだね。進路調査票出した?」

「…まだ。何したいのかわからないから、行きたい高校もわかんないんだよね」

「僕も同じ。できればむくと同じ学校ならいいなと思ってるくらい」

「ふふ、むくも、そう思ってた」

結之の手を取ってぎゅっと握って笑う。
むくのそんな行動に結之もつられて笑って、ふたりして笑い続けた。
親友の隣はとても居心地が良くて、むくはホッとする。


「早く出さないとね。…いちに相談してみよ」

「そうだね」

「いちのことだから、自分で決めろって言うんだろうなー」

「どうかな、親身に聞いてくれるんじゃない?」

今頃家でぼんやりテレビでも眺めているであろう姿を想像すると早く会いたくなった。
携帯電話を開いて、おかし食べたい、とメッセージを送ればすぐに返事が来る。
食べたいの考えといて、と。
ちょっとお高めのを買ってもらう。
そう思っていると、授業の開始のチャイムが鳴る。
急いで携帯を片付けると、結之もそそくさとむくの隣に腰を下ろした。


「自習にならないかな」

小さな声で呟くと、先生の手伝いをする学習係の生徒が教室に入ってきて、ガッツポーズをした。


「自習だー!」

学習係の生徒の言葉に、クラス中がガッツポーズする。
むくも隣の結之と目を合わせて、笑う。


「今連絡したら怒られそうだから、ささっと勉強して、お話ししよ」

「そうだね、むく」

クラス中がおしゃべりを始めた中、むくと結之は教科書とノートを見比べて課題を進めた。
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