いつだって
家まで送ってもらい玄関で別れようとしたら、部屋から顔を出した風太がお茶でも飲んで行かないかと声をかけた。
むくがぎゅっと壱琉の手を握ると、壱琉は頷いてから優しく微笑んだ。
部屋の中に入れば、汰絽がお茶を入れてリビングのテーブルに乗せている。


「そろそろ帰ってくると思ってたから、汰絽が用意してた」

「そうなのか。それはありがたい。汰絽、どうも」

「いいえ、むくをよくしてもらってますからね」

そう言って茶菓子をおいた汰絽は風太の隣に腰を下ろした。
むくの隣には壱琉が座って汰絽の入れた紅茶を飲んだ。
隣に座ったむくはいつもより静かで、汰絽が笑う。


「むく、寂しいの?」

いつもだったら、絶対に聞かないことを汰絽に聞かれ、むくはカッと頬が熱くなるのを感じた。
隣の壱琉を見ると、壱琉が驚いたように目を見開いている。
それから壱琉はむくを見て、優しく微笑む。
伸びてきた手がむくの頭を撫でた。


「…トイレっ」

壱琉の手を払って立ち上がる。
むくはすぐに部屋を出て行った。
熱くなった身体が、どうしようもなく恥ずかしくてむくはブンブンと頭を振る。
ちょうどトイレに行きたいと思っていたのもあって、トイレに入った。


「もー…。また、素直になれないっ」

用事を終えてから手を洗い、鏡を見る。
真っ赤な顔に頭を抱えてため息をついてから、パンっと頬を両手で叩いた。
深呼吸をしてから、リビングへ向かった。

ドアを開ける前、リビングの中の会話が聞こえてきた。
汰絽の優しく笑う声と、壱琉の声が聞こえる。


「むく、とても寂しがってたんですよ」

「知ってる。何年あの子だけを見てたと思う?」

「ふふ、そうですね。認めるのもちょっとやだけど…。壱琉さんが帰ってきて、きっと嬉しかったと思います」

「…ああ。俺も、迎えに来てるのがわかった時、嬉しかった。伝えてくれたんだな、ありがとう」

壱琉の優しい声に、むくはぎゅっと手を握った。

壱琉のことを思うと胸が締め付けられる。
手を強く握って、額にあてた。
離れていて、思った。
そばにいたい、ずっと、一時も離れずにそばにいたい。
本当は大好きで、大好きで、どうしようもない。
キスしたい、手をつなぎたい、大好きなんだ。


「むく、遅いな」

壱琉の声が聞こえてきて、むくはハッとした。
さっきまで考えていた気持ちをぐっとのみ込んで、深呼吸する。
大きく息を吐き出してから、むくは部屋に戻った。
それから壱琉の隣に座ってすんっと匂いを嗅ぐ。
タバコの壱琉の香りが鼻を通りぬけて、ぎゅっと手を握った。

嫌よ嫌よも end
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