もしも
お昼寝をしてから、ふたりはリビングのソファーで映画を見ていた。
こてんと膝の上に頭を置いたむくは壱琉の手をとる。
小さな手が壱琉の手をぎゅっと握った。
大きな手がすぐに握り返される。


「いち」

「どうした? 映画飽きた?」

「んーん」

「どっか行く?」

「行かない」

体の向きを変えたむくは壱琉の腰に抱きつく。
大きな手がむくの髪を撫でた。
その優しい手つきが心地よくて、むくはウトウトとし始める。


「また寝ちゃいそう…。でも寝たくない…」

「寝てもいいのに」

「んー、寝ない」

壱琉の腰から離れてむくは体を起こす。
それから今度は肩に頭を寄せた。


「壱琉、あのね、もしむくが…」

「ん?」

「ううん、なんでもない」

「変なむくちゃんだな」

そう言って笑った壱琉にぎゅっと胸が締め付けられた。
暖かくて、心地よくて壱琉のそばは、むくにとって最高の居場所だ。


「夕飯食べたら送るから」

「ん、明日も来てもいい?」

「学校終わったら迎え行こうか」

「うん」

頷いたむくに壱琉が笑う。
その笑い声に嬉しくなってむくも小さく笑った。


「やっぱり映画飽きた」

「だろうな」

「何する?」

「んー、買い物行くか」

「疲れてない? 平気?」

「ああ」

先に立ち上がった壱琉がむくを抱き上げる。
ぐるぐるとリビングを回った。
嬉しそうに笑うむくに、壱琉は優しく微笑んだ。
prev | next

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -