なれない
壱琉と会えなくなって一週間経つ。
日に日に眠りの浅さがまして、寝不足になり始めていた。
目の下のくまが濃くなってきて、顔色も悪いよと言われることが増える。


「ダメだなぁ」

小さく呟くと、隣の席に座っていた結之がむくを見た。
顔色の悪さにギョッとしつつ、むくの額に触れる。


「寒気とかない? すごい顔色悪いけど…」

「んー…、なんとか。寝不足がたたって」

「保健室行く?」

「ううん、そこまでじゃないから大丈夫だよ」

「何かあったらすぐ言ってね」

「ん」

昼休み、机に突っ伏して眠りにつこうとするも、壱琉からもらった最後のメールが頭によぎり眠れない。
メールに気付けなかったことも、苦しいくらい悲しかった。
ずっと電話も無視をしてしまった。
すぐに電話に出て、あの人は誰なのか、と問い詰めた方がよかった。
そう思ってしまう。


「もし、ゆうちゃんが大切な人だと思う人にずっと電話とか無視されてたらどう思う?」

「んー、嫌われたのかな、とか。何かしたのかなとか思うかな」

「だよね…」

小さくため息をついてから、むくは携帯を開いた。
壱琉が帰ってくるまであと一週間もある。
謝りたい。
謝って、ぎゅっと抱きしめてもらって、あの人が誰なのか、知りたかった。


「電話無視されてたら、怒るよね」

「ちょっとムッとしちゃうかもしれないね」

「…だよね」

「むくのこと大切に思ってくれてる人なら、きっとちゃんと謝れば許してくれるよ」

結之の言葉に少しだけホッとして、むくは笑った。
力のないその笑みに結之の不安そうな表情が見える。
大丈夫だよ、と笑って、結之の手を握った。


「ゆうちゃんの手て本当たぁちゃんの手みたい。優しくてあったかいの」

「そうかな。そんな優しくないよ」

そう言って笑った結之の手を離してむくも笑う。


「むっちゃん、話があるんだけど…」

そばに来た伊賀に声をかけられて、むくは頷いて立ち上がった。
どうしたのだろうかと結之を見ると、結之も不安そうにむくを見る。
大丈夫と唇を動かして伊賀の後ろを歩いた。



「むっちゃんに、言いたいことがあって」

「…何?」

「この間は、しつこく聞いてごめん」

「うん、別に…大丈夫だよ。こっちこそ、変に話さなくなってごめんね」

「ううん、気にしてないから大丈夫」

伊賀の目を見れなかった。
むくの知っている目だった。
むくのことを友人として、見ている目ではない。


「…むっちゃん、俺…」

「あっ、ごめん、まだ次の授業の宿題終わってなかったの。教室戻ってやらなきゃ」

それ以上は聞きたくない。
そう伝えるように早口で話して、むくは伊賀の前から離れていった。
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