やさしい味
「お邪魔します」

「ゆうちゃん!」

「汰絽ちゃん、お久しぶりです」

「いつぶりだったかな、久しぶりだねぇ」

嬉しそうにそばに寄ってきた汰絽がぎゅっと結之を抱きしめる。
汰絽に抱きしめられた結之は嬉しそうに、それでいて少しだけ辛そうな表情を見せた。
その表情にむくは、どうしたのだろうか、と首を傾げる。


「ゆうちゃん、また背が伸びたね」

「少しだけどね。関節が痛くて夜ねれないよ」

「そっか。子どもの時だけの痛みだよ」

微笑んだ汰絽に結之も笑う。
嬉しそうに笑う姿にむくも笑った。


「ゆっくりして行ってね」

「うん、ありがとう。汰絽ちゃん」

「あ、むく。あとでお菓子持ってくね」

「ありがとう。たぁちゃんの作ったクッキーがいいな」

「わかった。クッキーね、美味しい紅茶もいるかな?」

「もちろん」

汰絽にただいまの挨拶をしてから、結之と一緒に自室へ向かった。
部屋に入ってカーテンを開けてテレビをつける。
ゲームの準備をしていると、結之が腰を下ろした。


「汰絽ちゃん、相変わらず可愛いね」

「ふふ、自慢のお兄ちゃんですもの」

「そうだね。新作持ってきたよ」

「ありがと。今日は寝かせないよーっ」

「こっちこそ」

結之の笑い声にむくも思わず笑った。
ゲームを入れて始める。
ホラーゲーム特有の雰囲気に、心臓がトクトクと急ぎ出した。


夢中になってゲームを進めていると、汰絽のノックの音が聞こえた。
ゲームを止めてテレビに変えてからドアをあける。
汰絽がクッキーと紅茶を入れてきてくれた。


「たぁちゃんありがとう」

「どういたしまして。夕飯は何がいいとかある?」

「中華がいいなー、今日ゆうちゃんと話してたの。ゆうちゃん何か食べたいのある?」

「あ、中華系がいいな」

「わかりました。夕飯は中華ね。お腹すかしててね」

「もちろん」

むくと結之がかぶさるように答えてきて、汰絽が嬉しそうに笑う。
手を振った汰絽にふたりも手を振り返して、テレビをそのままにしてテーブルに乗せたクッキーと紅茶を見た。
クッキーと紅茶の美味しそうな香りに、ふたりは思わず笑みがこぼれる。


「汰絽ちゃんのクッキー久しぶりで嬉しい。頂いても?」

「もちろん。いただきます」

「いただきます」

手を合わせて挨拶をしてからクッキーを口に含む。
優しくて素朴な味がして、ふたりはまた笑う。


「美味しい」

「美味しいね。汰絽ちゃんのクッキー好きなんだ」

「ゆうちゃん昔からそうだよね」

「優しい味がして、好きなんだよね」

結之が嬉しそうにクッキーを食べるのを見て、むくも嬉しくなる。
優しい味が口の中に広がるのが心地よい。
紅茶もほんのりと甘くて、むくの一番大好きな紅茶の味だ。
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