おはよう
目がさめると、大きな腕の中にいた。
目覚ましはまだなっていない。
早く起きてしまって、むくは壱琉の胸にすり寄ってあくびをした。
今日も学校だから少しだけ早起きをして、一緒にいる時間を伸ばそうとしたけれど思ったよりもうんと早く起きてしまった。
壱琉はまだ眠っていて、腕の中から抜け出す。
「おはよう」
そっと頬におはようの挨拶をしてから、冷蔵庫の水を取りに行く。
水をひとくち飲んでから、もう一度寝室に戻ると壱琉が眉間にしわを寄せて眠っていた。
そのしわを指先で伸ばしながら、ベッドの中に入り壱琉の腕に寝転がる。
すぐに大きな腕が体に巻きつき抱き締められた。
「寝ぼけてる」
思わず笑いながら携帯を開いて写真を撮った。
自分と壱琉の写っている写真のフォルダに入れて、むくはもう一度壱琉に擦り寄る。
「んー…。むく…?」
「おはよ、いち」
「おはよう…。寝れたか?」
「うん、よく寝れた」
「そうか。なら良かった。むく、挨拶して」
「うん」
チュッと壱琉の顎にキスをすると、壱琉が笑いながら同じ場所にキスを返してくれた。
抱き締められたまま起き上がって、立ち上がって壱琉がぐるぐると回る。
やめて、と笑えば、壱琉はもういちど額におはようのキスをくれた。
「このままゴロゴロしてたい」
「そうだな」
「でも約束だから」
そう囁くと、壱琉は優しく笑って、むくを下ろした。
頭を優しく撫でられて、むくも笑う。
それから、もう一度おはようの挨拶をしてから、ふたりは今日一日の準備を始めた。
昨日の残りのカレーをふたりで食べてから、歯磨きを終えてあとは学校、仕事に行くだけの準備を終える。
ソファーに腰をかけながら、ぼんやりとテレビを見た。
ぼんやりとしていても、なんとなく幸せを感じて、隣に座る壱琉を見る。
まだ眠そうな壱琉は何回かあくびをしてて、それにつられてあくびをした。
「あくびうつった」
「はは、うつした」
「うつされたー。いち、学校まで送って」
「コンビニまで?」
「うん」
もうじき行かないといけない時間に時計が向かっている。
むくは壱琉にお願いをしてから立った。
手を伸ばせば壱琉がすぐにその手を掴み、むくは壱琉を立ち上がらせる。
そのままぎゅっと抱きしめられて、むくも抱きつく。
「次はいつ会える」
そっと耳元で囁くと、壱琉がすぐに耳元にキスをしてくる。
唇の温かさに思わず笑った。
「仕事が立て込むから当分会えない」
「…ん、そっか」
「寂しいよ」
まっすぐに伝えられて、むくも頷く。
額を合わせて、見つめ合えば壱琉が優しく微笑んだ。
「好きだよ、俺の可愛い赤ちゃん」
チュッと鼻先にキスをくれた。
その甘いキスに、むくは寂しさが増した。
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