またね
「まだ帰らないよな」

「あぁ」

「一杯どうだ」

「いいな、いただこうか」

テーブルについて壱琉と風太は晩酌の算段をする。
すぐに汰絽が冷えた日本酒一合とお猪口を持ってきた。
それからつまみの大根とイカの煮物が出される。


「春大根か」

「上の階の方から頂いたんです。美味しいですよ」

そう言って笑った汰絽の手の甲を撫で風太が礼を言う。
ふたりを見ていた壱琉はむくに視線を移した。
むくは父におやすみの挨拶をしている。
壱琉の視線に気づいたむくはすぐにそばに寄ってきた。
隣の席に座ったむくは、風太と壱琉を見て笑う。


「夜更かしだ」

「大人だからな」

「むくも夜更かししたい」

「まあ明日休みだしな。でも身長伸びなくなるぞー、汰絽みたいに」

「一言余計ですよ、風太さん」

むくと自分の分のジュースとケーキを持ってきた汰絽が風太の隣に座る。
汰絽に礼を告げたむくはケーキを見て嬉しそうに笑った。


「ケーキだー」

「イチゴのケーキだよ」

「むくイチゴのケーキ好き」

イチゴのケーキを出してもらったむくは嬉しそうに、ケーキを食べ始める。
その様子を見て、大人たちは微笑まずにはいられなかった。






「汰絽、春野、ありがとな。飯もつまみもうまかった」

「よかったです。またいつでもどうぞ」

「じゃあ、社長によろしくな」

「おう」

「むく、見送ってくる」

「はーい。風太さん、後片付けしましょう」

部屋の中に入っていった風太と汰絽に手を振って、むくは壱琉の手を引いて玄関の外に出る。
扉に背を預ければ、壱琉が笑った。


「下まで行くよ」

「もう遅いからここで構わない。…もういい子は寝る時間だ」

壱琉はそう言ってむくの鼻先に口付ける。
おやすみのキスをくれた壱琉の手をぎゅっと握った。


「もう子ども扱いしないで…」

それから、むくも壱琉の鼻先へおやすみのキスをした。

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