お引越し
「お、は、よー!!」

むくの元気な声を聞き、目を開く。
汰絽の上にあがって、嬉しそうににこにこしているむくに、汰絽も微笑んだ。
体を起して、布団を片付けてから、ふたりでキッチンへ向かった。


「むく、お皿机に並べてね」

「うん!」

むくが出したさらにパンとスクランブルエッグをのせ、その上にカリカリに焼いたベーコンを乗せた。
ふたりで食べる朝食は、これで最後。
そんな話をしながら、スクランブルエッグのおいしさに頬を落とした。

食器を片づけている間に、むくが着替え終わった。
汰絽もすぐに支度をしてから、むくの隣に座る。
ふかふかのソファーに座るのも、今日で最後だ。


「これからは、ふたりだけじゃなくなるね」

そう呟くと、むくはこてんと首をかしげた。
それから嬉しそうに汰絽の手を繋いでくる。


「ふうたといっしょ!」

「うん。そうだね」

むくの笑顔にどこか救われたような気持ちになって、汰絽も笑みを零した。
小さな体を抱きしめたら、チャイムの音が聞こえてきた。
移動させる荷物を引きずりながら出迎えると、風太がむくの頭をなでる。
重たい荷物を風太が手に取り、汰絽ははっと顔をあげた。


「いいですよ、車までですし…」

「ん?」

「あ、あの、荷物…」

「はい、乗った乗った」

「風太、すごーい」

荷物を車に乗せて、靴をはいたむくを抱きあげる。
背中を押されて車に乗り、むくをチャイルドシートに乗せる。


「重くなかったですか?」

「軽い軽い」

風太が手を振って、夏翔に車を出すように伝える。
夏翔は大きな声で笑いながら、エンジンをかけた。


「むくちゃん、ほれ」

夏翔からお菓子を受け取り、むくが嬉しそうに口に含んだ。
汰絽の膝にもチョコレートが飛んできて、夏翔に礼を伝える。
封を切って口元に運ぼうとしたら、隣から手が伸びてきて、チョコレートが奪われた。


「ああ! 僕の!」

「貰ったぞ」

「ひど…!」

「こっちのやるから。ほい」

めそっとした汰絽の口に、チョコレートを放り込む。
むぐ、と音を立てながらチョコレートを食べた汰絽に、風太がおかしそうに笑った。
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