お電話
「は…、風太さん、今日、寄って行きますか?」

「いや、今日はショウに用事があるから、よしとくよ」

「…そうですか」

少しだけ寂しそうな顔をした汰絽に頭を撫でる。
大きな手のひらに笑みを零した汰絽が、可愛らしく見えた。


「寂しい?」

「…別に、寂しくなんかないです」

「土曜にかまってやるから。寂しそうな顔するな」

「べ、べつに…、です」

「おお、ツンデレってやつか?」

じとっとした目で見られて、風太は小さく笑った。
杏と好野はそんなふたりをみて、笑ってしまう。
不安そうな顔をしていた好野はもうどこにもいない。
チャイムの音が聞こえてきて、汰絽と好野は顔を合わせた。


「じゃあ、たろ。また明日」

「はいっ」

ひらひらと振られる手のひらに、満面の笑みを浮かべ、汰絽も手を振り返した。



金曜日の夜。
最近、よく鳴るようになった電話が音を立てた。
ぱたぱたと駆け寄り、受話器を取ると、低い声が聞こえてきて、思わず笑みを零した。


「風太さん、こんばんは」

『おう。…むくはもう寝たか?』

「はい、今日はおねむだったみたいです」

『そうか。…荷物のことなんだけど』

「あ、もともと持ち物が少ないので、大丈夫ですよ」

『それならいい』

少しだけ静かになって、汰絽は目を瞑った。
明日がとても楽しみで、どこか緊張をしている。


『ベッド、どうする? 空き部屋が二部屋あるから、そのどっちかでいいよな』

「ベッド…ですか?」

『むくはまだひとりで寝れないだろ? だから、ひとつでいいかって考えてたんだけど』

「あ、はい。大丈夫、です」

『わかった。…あとは、ああ、でかい家具とかはどうする?』

「本家の方がなんとかしてくださるそうです。なので、荷物は衣類品とかだけですから」

そういうと、風太がああ、と答えまた沈黙が訪れた。
心地の良い沈黙に、思わずあくびが零れてしまう。
聞こえてないかな、と胸をなでおろそうとした時、笑い声が聞こえてきた。


『ねむいか?』

「…すこしだけ」

『そうか。…明日、9時頃に迎えに行くから』

「はい…」

『ゆっくり寝ろよ。じゃあな』

「はい、おやすみなさい…」

風太のおやすみと言う声を聞いて、電話を切る。
もう一度あくびをして、汰絽はむくと自分の寝室へ向かった。
prev | next

back
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -