風太と好野の誓い
「風太さん、よし君に事情を教えてもいいですか?」

「ああ、別に。お前が良ければ」

弁当を食べ終わった風太が、ビニール袋にゴミを入れる。
汰絽は好野をまっすぐ見て、ごくりと喉を上下させた。


「あのね、よし君」

「なに?」

「風斗さん覚えてる?」

「覚えてるよ」

弁当箱を片付けながら、好野は汰絽を見た。
汰絽もいそいそと手を動かしていて、好野も自分の手元に視線を向けた。


「風斗さん、風太さんのお父さんなの」

「…まじで!? 春野先輩、ほんとうですか!?」

「ああ」

「よおく見れば、似てますね…」

好野が驚愕した表情のまま、風太をまじまじと見る。
似たところを見つけたのか、ほお、と声をあげた。


「それでね、風斗さん、おばあちゃんから僕達のことたのまれて」

「うん」

「養子縁組、組んで、春野先輩と家族になったの」

「か、…家族!?」

大きな声で叫んだ好野に、風太が不機嫌そうな顔をした。
汰絽はしらっとした顔で、そうですよね、風太さんと声をかける。
驚いているのは、好野だけではない。
杏も目を見開いて風太を見ていた。


「はるのん、マンションの方に汰絽ちゃん引っ越すの?」

「ああ、そのつもり」

「汰絽、お前あの家どうするんだよ」

不安そうな顔をした好野に、汰絽は微笑んで見せた。
それから、風太をちらりと見る。
風太も気になっているのか、こちらを見ていた。


「本家の方に、預かってもらうよ。お仏壇のことも、おうちのことも」

「それで、いいの? あの家、お前とアンリさんとむくちゃんの思い出が…」

「いいの。…おばあちゃんとの思い出は、写真と僕が覚えているので十分だよ」

「…汰絽」

好野は決意したようにまっすぐ見つめてくる汰絽に、どこか置いて行かれたような…そんな気持ちを覚えた。
泣き虫な親友はいつからこんなまっすぐな目を見せるようになっただろうか。

そんな風に思い、好野は汰絽の隣に座る風太を見た。
風太も好野を見て、一回瞬きをする。
好野はいつもはびくびくして見せることのない、どこか汰絽に似たまっすぐな目を見せた。


「俺の親友、泣き虫なんです」

「あぁ」

「泣き虫でも、無理してしまうんです」

「よし君?」

不思議そうに首をかしげた汰絽に軽く笑う。
それから、風太に向かって頭を下げた。


「お願いします。俺の大切な親友を」

好野の言葉に、汰絽があっ、と声を零した。
頭を下げられた風太は、好野の肩を軽く叩く。


「あぁ。…大切にする」

色々な意味を込めて、汰絽の大切な親友に、風太は誓った。
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