減ってますから
「風斗さんどうだった?」

「まあ、元気そうだった」

「そうか、良かった。汰絽ちゃん、ほい。ジュース」

「わっ、ありがとうございます」

貰ったペットボトルを見る。
リンゴの上に可愛らしいキャラクターが乗っているラベルに微笑んだ。
キャップを緩めて一口飲む。
ふう、と一息ついたところで、持っていたペットボトルが隣に奪われた。


「ああっ!」

「もーらい」

「も、貰うって言う前に飲んだ!!」

ひどいっ、と叫びそうな顔をしている汰絽に、風太はガブガブとりんごジュースを飲む。
だいぶ減ったところで汰絽の膝に戻して、にやりと笑った。


「いーじゃねえか。減るもんじゃねえし」

「いやっ! 減ってますーっ。ああーっ」

「はいはい。後でアイスでも買ってあげますよ」

「アイスはもういいです。まだのこってますからっ」

むすぅとした汰絽に風太がにやにやしながら、膨らんだ頬をつつく。
楽しそうなふたりに、夏翔が運転しながら軽く笑った。


「なんだよ、お前」

「汰絽ですよう」

「…お前ら付き合いたてのカップルの次は漫才か」

「なんでやねん」

「…今、たろちゃんからすっげえ低い声の突っ込みが…」

そんなくだらない会話をしているうちに、汰絽の家が見えてきた。
停まった車に汰絽は荷物を手に取り、車を降りる支度をする。


「俺も降りるから。じゃあな」

「おう。たろちゃんもじゃあな」

「ありがとうございましたっ、夏翔さん」

「いいえ」

夏翔に頭を下げて車を降りる。
そのあとに風太も降りて、夏翔にひらひらと手を振った。
汰絽は一緒に下りてきた風太に首をかしげる。


「春野先輩?」

「あ? ああ。いやさ、これから家族になるおふたりさんと交流を深めようかと」

「…そうですか」

「はい、そうですが。どうしたましか? たろさん」

「ふふ、いいえ、何でもないです。…晩ご飯食べていきますよね?」

「おう」

嬉しそうに笑った汰絽に、風太はほっとしながら、風見鶏の家に入った。
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