真っ赤
「たぁちゃん、起きてー! あっさでっすよー!」
むくの元気な声をきいて、汰絽は目を覚ました。
眠たい目を擦りながら起き上がれば、むくが嬉しそうに声を上げる。
その嬉しそうな声につられて、汰絽は笑みを零した。
「おはよー!!」
「おはよぉ。朝ごはん、何にしよっか」
「パン!」
「わかった、パンね。むく、先に顔洗ってきて」
「はーい」
洗面所に向かったむくを見て、汰絽はキッチンに向かう。
お弁当を用意して、朝食をさっと作り上げる。
支度が終わり、むくの幼稚園の鞄に今日の荷物をつめた。
それから、制服を出し、鞄の脇に置く。
顔を洗ってきたむくと手を合わせた。
今日の朝食はベーコンエッグにこんがりと焼き目のついたトーストとスウィートコーン。
「たぁちゃん、だいすきっ」
「どうしたの? 甘えん坊さん」
「甘えん坊さんいや?」
「好きだよ。むく」
「ふふっ」
「食器運んだら、歯磨きしようね」
「うんっ」
食器を一緒に運んでから、洗面所に向かう。
あー、と口を広げさせて、歯磨きチェックをしてから、制服に着替えさせた。
汰絽も自分の支度をしてから、ふたりで身だしなみをチェックする。
「ん、完璧。では?」
「いってきまーす」
祖母の仏壇に手を振って、ふたりは風見鶏の家を出た。
「天気いいねぇ」
「おひさまー」
「綺麗だね」
「うん!」
むくが嬉しそうにぴょんぴょん跳ねる。
手を繋いで、元気な笑い声が聞こえてくる幼稚園に向かった。
「行ってらっしゃい。…いい子にしててね」
「うん! いってきまーす」
玄関で結之が待っているのを見て、むくは手を振りながら結之の方へ駆けて行った。
もう一度振り返って手を振ったむくにおおきく手を振り返す。
幼稚園を後にして、あの人通りの少ない道を歩いた。
葉桜に変わった桜を見上げると、とてもすがすがしい気持ちになった。
風が吹いて、髪が頬を撫でる。
その風に促される様に前を向けば、風太も汰絽と同じように空を見上げていた。
風太の綺麗な白髪が風に揺れて、思わず息を飲む。
「たろ、はよ」
ぼーっと風太を眺めていたら、風太がこちらを向いて名前を呼んだ。
それにこたえようとしたが、汰絽は息が詰まって小さな声しか出ない。
そんな様子をおかしく思ったのか、風太が眉間にしわを寄せて尋ねてきた。
「どうした?」
「…っ、」
「顔、真っ赤だぞ」
「…そう、ですか?」
風太に頭を撫でられて、汰絽はぽかん、とした。
確かに顔が熱い。
要するに、火照っている。
なぜ今、顔が赤くなるのかわからずに汰絽は首をかしげた。
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