家族、みんな?
「むくに選んでほしいの。たろの一番はむくだから。むくの幸せがたろの幸せだから」

汰絽の言葉に、むくはきゅっと自分の胸元をつかんだ。
大事なことを聞かれている。
幼いむくにもそれがわかってしまい、答えるのに躊躇してしまっていた。


「むく、むく…」

「うん?」

「あのね、むうね、たぁちゃんと一緒なら、ぜんぶいいよ」

「…むく」

「あのね、でもね、家族になるのが、むくの大好きな人なら、いいな」

むくの言葉に、風太の笑った顔を思い出した。
それからむくを抱きしめる腕に力を入れて、うん、と答える。
汰絽もそう思うよ、と気持ちを込めて。


「むくは、春野先輩、好き?」

「ふうた?」

「うん」

「ふうた、好き!」

「そっか」

むくの大きな返事を聞いて、安心する。
きらきらと輝いた瞳と目が合って、にっこりと笑いあう。
汰絽の笑顔が嬉しいのか、むくは嬉しそうにもう一度笑みを零した。


「家族ができたら、このお家から出て行かなくちゃなんだけど、それでもいい?」

「…かざみどりのおうち、どうなるの?」

「もう帰ってこれないの。けれど、おばあちゃんとの思い出の詰まったものとか持っていくから」

「大丈夫、だね」

こくりと大きく頷いたむくにほっと息をつく。

汰絽が思っていたほどむくは子どもじゃない。
自分の気持ちを、ちゃんと伝えてくれる。

そのことに気付いて、汰絽は心の中で風太に礼を告げた。
むくを抱きしめていた腕の力を緩めて、ゆっくりと体を起こす。
汰絽の上から降りたむくは、自分の手よりも大きな汰絽の手をぎゅっと握った。
小さな手の力に愛おしさを感じて、小さく笑った。
prev | next

back
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -