今度の約束
「汰絽君、むく君、ありがとね」

風斗が微笑むのを見て、汰絽とむくは一緒に頷いた。
ベッドから降りたむくは、風斗の手を握って、微笑む。


「また、会えてよかったです」

「むうも!」

「そっか。嬉しいなあ」

嬉しそうな風斗の様子を見て、風太が安心したようにため息をついた。
父のこんなに嬉しそうな顔を見たのは久しぶりだ。


「たろ、むく。そろそろな」

「はい。風斗さん、また来ますね」

「うん。またね」

「はい。むくも」

「またね! かざとっ」

大きな手のひらが、むくと汰絽の頭をぽんぽん、と撫でた。
そんな仕草が風太と似ていて、汰絽は思わず笑ってしまう。
隣のむくが不思議そうな顔をしていて、汰絽はなんでもないよ、とむくの手を繋いだ。


「バイバイ!」

風太に背中を押されて、病室を出た。
扉が閉まるまで、風斗が手を振ってくれている。
病室を出て、ほかほかとする心のままエレベーターに乗り込んだ。
もうむくはエレベーターを怖がっていない。

玄関を出て、温かい風を感じる。
もう、夏が近づいてきていた。
風太が夏翔に電話をかけるのを聞きながら、むくと視線を合わせる。
名前を呼んで、そっと髪を撫でた。


「たぁちゃんっ」

ぎゅっと抱きついてきたむくの温かさを感じて、安心する。
きゃあきゃあとはしゃぐむくの体をぎゅっと抱きしめた。
それにこたえるようにむくも力を入れてきて、嬉しくなる。

いつの間にか電話を終えていた風太が、くつくつと笑うのを聞いて、汰絽は少し頬を赤らめた。


「ほら、車来たぞ」

「はあーいっ」

夏翔の車が玄関について、3人は乗り込んだ。
風太、むく、汰絽の順番で座る。


「お帰り」

「おう。このまま、たろん家寄ってくれ」

「了解。…汰絽ちゃん、どっか寄りたいとこある?」

「いえ、特にないので、大丈夫です」

「了解」

アクセルを踏んで、車は病院を後にする。
静かになった車内に、むくがうとうとし始めて、汰絽が微笑む。
ぽんぽん、と膝を叩くと、むくはふにゃりと笑って、汰絽の膝に頭を預けた。
ふわふわの髪を撫でていると、すぐに瞼を下ろして寝息を立てる。
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