お迎え
幼稚園に着くと、風太とふたりで園内に入った。
珍しい髪色の風太に園児たちがきらきらとした眼差しを向ける。
風太は小さくてはつらつとした園児達を見て苦笑した。


「ちっこいなー」

風太の呟きに思わず笑う。
園の中に入り下駄箱や壁に貼られたたくさんの折り紙や絵を眺める。
先生がむくを呼ぶ声を聞いて、風太は園の中へ視線を向けた。
たったった、と軽やかな足音とともにむくが走ってくる。
後ろから先生も走ってきて、汰絽が微笑んだ。


「たぁーちゃんっ」

腕を広げた汰絽に飛びついたむくは、柔らかな頬を擦り寄せた。
そのままむくを抱きしめて、先生に頭を下げる。
風太は汰絽に抱きついたむくの頭を撫でた。


「ふーた!」

「おう。久しぶり、むく」

「ふうたお泊り!」

「そうだぞ」

「お風呂いっしょね!」

「あぁ」

汰絽の腕の中から楽しそうにはしゃぐむくと話す。
ふわふわとした蜂蜜色の髪が揺れて、汰絽の鼻先をくすぐった。
くしゅん。


「たぁちゃん、だいじょーぶ?」

「大丈夫だよー」

「そっかぁー。歩く!」

「うん、わかった」

そっとむくを地面に下ろして、汰絽はポケットティッシュを取り出して鼻をかんだ。
風太がその間にむくと手を繋ぐ。
ティッシュをしまい、汰絽も反対の手を握った。


「むく、おててつなぐのすきー!」

「そっか。むくの手は小さいな」

「風太の手、おっきい」

「むくよりもうんと大人だからな」

「へえー」

きらきらとした目が風太を見上げる。
愛らしい視線に風太は笑いながら汰絽に視線を向けた。
汰絽は楽しそうに笑うむくを見て、微笑んでいる。

汰絽の笑顔は、とても綺麗だ。
空に輝く太陽のような笑みではなくて、地面に咲いている小さな花のような…。
小さくて、優しいもの。
風太はそんなことを思いつつ、汰絽から正面に視線を戻した。
隣からむくの歌声が聞こえてくる。


「何して遊びましょうかね」

汰絽がぼんやりと考える。
風太も同じようになにをしようか考えながら、帰り道を歩いた。
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