お泊り
あれから、お昼を毎日一緒に食べるようになって、数日。
風太がお泊りする日になった。
教室まで迎えに行くという風太の提案を丁重にお断りして、汰絽は玄関の自販機前で風太を待っていた。
その隣には好野がいる。
好野はどうやら杏と出掛けにいくようで、杏を待っていた。


「いつの間にか仲良しさんになってたねぇ」

「汰絽もな。春野先輩と仲良しになったな」

「春野先輩、すっごく優しくていい人だもん」

ふんわりと笑った汰絽に好野もなごむ、と言いながら笑った。
きゃっきゃとふたりで騒いでいるところに、楽しげな鼻歌が聞こえてくる。


「待ったか?」

「いえ、そうでもないです」

そう言って笑う汰絽に風太も軽く微笑む。
ふわふわの蜂蜜色を撫でてくれた。


「一外はどうしたんだ?」

「は、春野先輩。こんにちは。今日、お出かけです」

「おう。へえ、杏と?」

「はい。…え? なんですか、その憐みの目…」

「まあ、がんばれ」

「? が、がんばります」

好野が首をかしげ、その好野の背中に抱きついている杏はにやにやと笑う。
汰絽も同じように首をかしげながら、風太を見上げた。


「お、行くか」

「はいっ。よし君、あん先輩、さようなら」

「さよならー」

「ばいばい、汰絽」

ふたりと別れて、玄関を出る。
風太の隣に立って歩くと、周りがこちらに視線を寄せてきた。


「みられてます」

「そうか?」

「はい。先輩、目立つから」

「そうでもない」

「えー?」

クスクスと笑う汰絽に風太は首に手を当てた。
隣を歩く小さい存在が楽しそうな様子が嬉しい。


「汰絽、楽しい?」

「楽しいですっ。先輩、むくも楽しみにしてたんですよ!」

今にもスキップしだしそうな汰絽に笑い、風太は俺も楽しみにしていた、と答えた。
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