屋上
授業中、ぼんやりと空を眺める。
ぷかぷかと浮かぶ雲が気楽そうで、眺めていると自分も浮いているような気持ちになった。
隣の席で夢の国に旅立っている好野をチラリと見た。
「はい、今日はこれでおしまい。号令」
きりーつ、とゆるい声に従い立ち上がる。
お昼休みを知らせるチャイムを聞いて、汰絽は好野の肩を揺すった。
「おはよ」
「おはよー。…昼か」
「うん」
「ん、ちょっと待って携帯」
机の中から携帯を取り出した好野は携帯を開く。
汰絽、屋上だって、と好野に言われて、汰絽は頷いた。
ショルダーバックを担ぎ、椅子を片付ける。
好野の支度が終え、ふたりは教室を出た。
「今日は屋上ー」
杏の鼻歌が聞こえてきて、好野が微笑む。
そんな好野の後ろを汰絽はぼんやり窓の外を眺めながら歩く。
玄関の自販機で杏と風太が飲み物を買っているのが見えて、好野は汰絽の手を引いてそちらへ向かった。
「ちょうどだったねぇー! よしよし。いこっかー」
好野の腕に絡みついた杏に汰絽は笑いながら、風太のほうへ移った。
いつの間にか仲良しになった杏と好野の様子が微笑ましい。
風太の隣に立つと、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。
「屋上、楽しみです」
「そうか。屋上、すげー居心地良いぞ」
「ふふ、お昼寝にちょうどよさそう」
微笑んだ汰絽に歩くように促して、屋上へ向かった。
「今日、雲が少なくて空が綺麗なんです」
「へえ。授業中外見てたのか?」
「ちょっとだけ…」
少し頬を染めた汰絽に風太は軽く笑う。
屋上へ続く階段を上って行った。
好野と杏が先に扉を開けて屋上に出る。
ふわりと風が舞って、汰絽と風太の頬を撫でた。
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