お泊り好き
「明日もまたここに来いよ」

空き教室を出る際、風太にそう言われ、汰絽はこくりと頷いた。
ふたりで教室へ戻る。
好野が少し不安そうに汰絽を見た。


「大丈夫か?」

「…ん、どうして?」

「いや、弁当のこと聞かれてた時、」

「大丈夫だよ」

困ったように笑う汰絽をじっと見つめる。
少し寂しそうな表情。
長い付き合いの好野にしか分からない。


「よし君、もう大丈夫だよ」

「汰絽がそういうなら」

「心配性だなー、よし君は」

「そうかな。あ、汰絽、チャイム鳴った。急ごう」

「うん」

ふたりで走って教室へ向かう。
好野は楽しそうに笑う汰絽を見て、ほっと息をついた。


放課後。
授業も呆気なく終え、鞄を担ぎ教室を出る。
好野は部活へ向かい、汰絽もむくのお迎えに向かった。


「むく」

幼稚園の玄関に入るとむくが結之の隣に腰をかけ座っていた。
結之に挨拶をしてから、むくを抱き上げる。
柔らかな頬に頬擦りして、先生に挨拶をした。


「ゆうちゃん、ばいばいーっ」

手を振るむくと一緒に結之に手を振る。
先生と手を繋いで教室へ向かう結之がぶんぶんと手を振っていた。
汰絽もそんな結之にもう一度手を振って、帰路につく。
汰絽の腕から降りたむくは、手を繋いで歩いた。


「むく、今度の土曜日、春野先輩がお泊りしてくれるって」

「風太? ほんと? ほんと?」

「ほんとだよ」

「わあいっ、うれしい」

むくが嬉しそうに飛び跳ねる。
そんなむくに微笑んだ。


「むくね、お泊り好きっ」

「そう?」

「だって、おうちがにぎやかになるでしょ?」

「そうだね、たろもお泊り好きかも」

「ね?」

きゅっと手を繋いだふたりは風見鶏の家に入っていった。
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