おじゃましました
「案外早く迎えに来たな」

「そうですね…」

「悪いけど、もう少しいても構わないか?」

「構いませんよ」

ふんわりと笑う汰絽に、風太は柔らかな髪を撫でる。
さらさらと指を擦りぬける髪に、微笑んだ。


「この間買った着替えとか、置いといていいか?」

「え? いいですけど…。また、お泊りしてくれるんですか?」

少し不安そうな表情の汰絽に、風太はああ、と返事をした。
風太の返事に汰絽は安心する。


「たろ、アイス食うか?」

「あ、食べたいです。…春野先輩、何食べますか?」

「林檎頼む」

「はい」

立ち上がり、キッチンへ向かう。
冷凍庫からアイスを取り出し、風太の元へ戻った。


「ありがと」

風太に手渡してソファーに腰を下ろす。
アイスの袋開け、アイスを口に含んだ。


「むくって何歳?」

「3歳です」

「へえ、案外大人びてるんだな」

「そう、ですか…?」

「ああ。…たろ?」

風太の言葉に汰絽は俯いた。
そんな汰絽に気付いた風太は、汰絽を覗き込む。
不安そうな表情は、今にも泣き出してしまいそうだ。


「どうした?」

「い、いえ。なんでもないです。あ、それより、むく起こしますね! これ以上お昼寝したら、夜寝れなくなっちゃう」

「…? そうだな」

むく、とむくを起こしはじめた汰絽を見る。
携帯を開いて、時間を確認すると4時を過ぎていた。


「たろ。そろそろ帰るな」

汰絽にそう告げ、風太は立ち上がる。
昨日リビングに置いた荷物を手に取った。
目を覚ましたむくは、風太が荷物を持っていることに気付き体を起こす。


「…ふーたかえるの?」

「ああ。これから用事があるから。また今度遊ぼうな」

「うん…! 約束ねっ」

小指を伸ばしたむくに、風太は小さく笑い、むくの小指に自分の小指を絡めた。
小さな手と大きな手が上下に揺すられて、汰絽は微笑んだ。

むくと手を離して、玄関へ向かう。
また、近いうちに泊まらせてくれ、そう言って笑った風太にむくと一緒に大きく頷いた。


「汰絽はまた明日な」

「はい、また…、明日」

「またね、ふーた!!」

ぶんぶんと大きく手を振るむくに、風太は軽く笑った。
扉を閉めて、通りに出る。

風太は、後輩と後輩の小さな甥っ子の住む風見鶏の家を後にした。

総長先輩 end
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