無理なんて、してない
家について、リビングに昼寝布団を敷く。
手を洗い、戻ってきたむくと結之はすぐに布団に入る。
遊び疲れて眠たくなっていたのか、ふたりはすぐに眠りについた。
愛らしい寝顔のふたりが目を覚まさないように、優しく頭を撫でてソファーに座った風太の隣に腰を下ろす。


「ぐっすりだな」

「そうですね。…夜、ちゃんと寝付ければいいんですが」

「大丈夫だろ」

風太に言われて、汰絽はこくりと頷く。
カーテンの隙間から入って来る日の光を眺めた。


「お前は寝れるの?」

「大丈夫ですよ?」

「へぇ」

風太の真剣な顔に、汰絽もまじめに返事をする。
そんな汰絽を風太が笑い、汰絽は頬を染めた。
からかわれたことに気付き、小さくため息をつく。


「ゆうちゃんが帰る時、先輩も帰りますか?」

「おう」

「早いですが、お世話になりました」

「こちらこそ」

丁寧に頭を下げた汰絽に、風太も頭を下げ返す。
汰絽が笑ったのを見て、同じように軽く笑った。


「たろ」

「はい」

「お前さ、無理すんなよ」

「え?」

風太の言葉に、汰絽はこてんと首をかしげた。
無理をしているつもりはない。
けれど、風太の言葉がストンと胸に落ちた。


「…あ、」

突然風太の携帯が鳴り、携帯を取る。
悪い、と断りを入れて、風太は立ち上がった。
それから、廊下に出て電話に出る。


「…無理するな…? 無理、してるつもりなんて、ないのに…」

きゅっと唇を噛みしめて、汰絽は目元を押さえた。
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