次の約束
「たあちゃん、まだあそんでい?」

「いいよ」

汰絽の返事を聞いて、むくと結之はシーソーに駆け寄っていく。
お弁当とレジャーシートを片付けて、汰絽と風太はベンチに腰を下ろした。


「何を話していたんですか?」

「ん? 内緒」

「そうですか」

「何。やきもち?」

風太はチラリと汰絽を覗き見た。
特に表情は変わっていないけれど、汰絽が少し動揺したのがわかる。


「や…焼いてません」

「たろ、お前って可愛いよな」

「そんなことないです」

汰絽が少し頬を染めたのを見た。
そんな表情に思わず笑ってしまう。
急に愛おしい気持ちがあふれて、風太はふわふわの蜂蜜色の髪に指先を伸ばした。


「髪の色、綺麗な色してるよな」

「…そうですか? 春野先輩のほうが綺麗だと思いますよ?」

「そうかー? ただ白いだけだが」

「綺麗ですよ。…染めてるんですか?」

「まあ、染めてる。地毛は金髪。父親がたしかハーフだったんだよ」

へえ、と感心しながら、風太の髪を見つめる。
自分の髪を見つめる汰絽の、ふわふわの蜂蜜色をもう一度撫でた。
心地よい感触に、目を細める。
汰絽も撫でられるのが気持ちいいのか、目を瞑っていた。


「僕は姉と同じ髪色でしたよ」

「蜂蜜みたいな?」

「蜂蜜は初めて言われました」

ふふ、と笑い声を洩らす汰絽の髪から手を離して、風太はむくと結之のほうへ視線を向けた。
今は花壇で花を眺めている。
きゃっきゃと楽しそうな様子を、汰絽が写真を写していた。


「結構いい時間だ。昼寝させなくていいのか?」

「そうですね。帰りましょう」

「ああ。むく、結之、帰るぞー」

風太の呼び声にむくと結之は駆け寄ってきた。
嬉しそうな顔をしたふたりと手を繋ぐ。


「ゆうちゃん、楽しかった?」

「うん」

汰絽が結之のほうを向いて話していると、結之は頬を染めた。


「ゆうちゃん、具合悪い?」

「ううん、ち、ちがうよ」

「たろ、荷物持つから」

荷物を片手に持った風太が傍に来て、結之は大丈夫、と笑った。
汰絽から微笑みかけられ、こくりと頷く。
傍に来た風太は結之と手を繋いだ。


「春野先輩、夕飯どうしますか?」

「夕飯? …ああ、悪い。杏に呼ばれてるから」

「…そ、そうですよね」

少し寂しそうな顔をした汰絽に風太は苦笑する。


「また、泊まらせて」

「はい」

風太の言葉で笑みを浮かべた汰絽に、今度はちいさく笑った。
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