ないしょの約束
「おなかいっぱあーい」
「むくもゆうちゃんもたくさん食べたね」
「うん、おいしかった」
「良かった」
汰絽が嬉しそうに笑うのを見て、風太も軽く笑った。
小さなライオンは、まるで母ライオンのようだ。
その様子がなんだか微笑ましすぎて笑ってしまう。
「わたあめー」
「おなかいっぱいじゃないの?」
「わたあめは、べつばらなのーっ」
「そう? なら食べちゃおっか。ゆうちゃんと一緒に食べてね」
むくの元気な返事を聞いて、汰絽は鞄から綿あめの袋を取り出す。
袋を開けて、手渡すとむくと結之が嬉しそうに食べ始めた。
ふわふわとした綿あめがむくの頬につく。
「むく、頬についてる」
「ん、ん」
「ほら」
むくの頬についた綿あめを指先でとり、口に運ぶ。
甘い味が口の中に広がった。
「ふうた、ありがとぉ」
「どういたしまして」
「うん、あのね、きいて。風太」
「どうした?」
そう聞くと、むくは風太の膝の上に乗った。
内緒話をするように、風太の耳に口をよせた。
「むくね、たぁちゃんと、ゆうちゃんと一緒、すごい幸せなの」
「そうか」
「そこにね、ふうたもいたらもっと幸せだよ」
「俺も?」
「うん」
こそこそ、と嬉しそうな声に、風太は真剣に聞く。
可愛げのあることを言う、むくの頭を撫でて、むくに俺も幸せだ、と答えた。
「そっか…! じゃあ、ふうたもいっぱい、いっぱい遊びに来てね!」
「おう。約束するか?」
「あのね、ないしょなんだけどね、ふうたが来たら、たあちゃん、とってもうれしそうだったの」
「たろが?」
「うん。よし君が来たときは、たのしそう。でもふうたが来たときはちょっと違ったの」
「そうか…」
「うん。だから、いっぱい遊びに来てね…!」
むくがほにゃんと効果音が出そうな表情で笑ったのを見て、とても汰絽に似ていると思った。
それから、ちらっと汰絽の方へ視線を寄せると、目が合う。
汰絽は目があったら、むくと同じようにふにゃんと笑った。
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