寝癖
「お休みなのに制服ってちょっとおもしろいですね」
「そうか?」
「はい」
むくと結之が手を繋いで歩く。
その後ろを汰絽と風太はゆっくりと歩いていた。
前の小さな影が楽しそうにはしゃぐのを見て、汰絽は微笑んだ。
家事を終え、お手製のお弁当を持って家を出た。
「お菓子何が良い?」
「わたあめとね、わたあめとぉ…」
「わたあめが食べたいんだな」
「うんっ。風太は何食べるのー?」
「んー。特にないな。たろ、他は?」
「いいえ、ありませんよ。じゃあ、買ってきますね。お外で待ってて下さい」
かごを持った汰絽と別れて、風太はむくと結之と手を繋いで外に出た。
むくと結之は風太の手を繋いでうきうきとしている。
「楽しそうだな」
「うんっ。楽しいっ。ふうたと、ゆうちゃんと、たあちゃん!」
「ゆうのも楽しいよ」
笑いあうふたりに風太も笑みをこぼして汰絽を待った。
コンビニから出てきた汰絽は、そんな3人に小さく笑った。
「むく、元気だな」
「はい。もっと小さな時からずっと元気ですよ」
「へえ。まあ、これからだしな」
「そうですね。ふふ、なんか春野先輩、おじいちゃんみたいです」
「たろは猫みたい」
「いーんです。にゃんこは可愛いので」
「はいはい。お、結之、前向いて歩きな」
「うん」
用水路を覗き込みながら歩く結之に前を向くように促す。
車道側を歩いていた汰絽を用水路側によせて、風太はむくの寝癖を眺めた。
歩くたびにひょこひょこと揺れてる。
穏やかな空気と、むくの寝癖が春の陽気を感じさせた。
「あっ、ここ、曲がったら到着です」
「おう」
汰絽が指さした曲がり角。
4人はゆっくりと穏やかな足取りで公園へ向かった。
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