サンタさん
「おはよー…! あっ!」

目をこすりながら歩いてきたむくがリビングに入ってきて、わっと目を見開いた。
小さなモミの木の下に大きなラッピングされた袋が置かれていて、むくはそれに駆け寄る。
その様子をキッチンから見ていたふたりは小さく笑った。


「たぁちゃんっ」

大きな声で呼ばれた汰絽はなあに、と優しい声で答えた。
優しい声が温かくて、風太は汰絽を盗み見る。
自分には向けない表情が見れて、きゅっと心が掴まれた。
むくの隣に行った汰絽はしゃがみこんでむくの頭を撫でる。


「サンタさん来た!」

「そうね。開けてみたらどうかな」

「いいのっ」

「もちろん。見て、むく。むくくんへってお手紙あるよ。たぁが読んであげよっか」

「ん!」

カーペットの上に腰を下ろしたふたりにつられ、風太もそばによる。
むくを挟んで座って、風斗に書いてほしいと頼んだ手紙を開いた。


「むくくんがいい子にしていたからむくくんの欲しがっていたプレゼントを用意しました。大事にしてね。サンタさんより」

「わぁ…!」

「むくいい子だもんな。サンタさん、ちゃんと知ってたな」

「ん!」

嬉しそうにゆらゆら体を揺らすむくを見て、風太と汰絽は思わず顔を合わせて笑った。
それからむくに開けていいよ、と伝えるとむくは恐る恐るリボンを解く。
袋が開いて出てきたものに、むくはわっと立ち上がった。


「クマさんっ!」

袋の中から出てきたクマを見て、むくは両手で口元を隠しながら跳ねた。
ぴょんぴょん跳ねるむくは嬉しそうに部屋の中を走る。


「クマさんだ!」

戻ってきたむくはクマの手を小さな手でつかんでもう一度嬉しそうに叫んだ。
それから大きなクマをぎゅっと抱き締める。


「むくのっ」

「うん、むくのだよ」

「クマさん大好きっ」

ぎゅっと抱きついたむくはそのままカーペットの上に横たわりゴロゴロと回る。
その様子をふたりは眺めながらもう一度笑った。


「喜んでもらえてよかった」

小さく内緒話を囁くように呟いた汰絽に、風太は頷いた。
それから寝転がったむくの写真を撮る。


「むく、クマさん大事にしてね」

「むうのたからもも!」

「宝物ね」

むくを挟んでふたりも横たわり、ぎゅっとむくを抱きしめた。
小さな子ども体温が温かくて心地よい。


「幸せ」

小さな声が幸せそうで、風太はその幸せをかみしめるようにふたりを抱きしめた。
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