内緒の夜更かし
「むく、寝た?」
「はい。最近は一度寝れば朝まで起きないですから。前の寝つきの悪さが嘘だったみたいに」
「なんだったんだろうな。また同じようなことがあったら、教えて」
こくりと頷いた汰絽に風太も頷く。
それから、リビングの明かりの下、ふたりは大きい布とミシンを袋の中から取り出した。
ドアがしっかりしまっているか確認して、ふたりはガタガタとミシンを動かし始める。
「なんとか様になってきましたね」
「そうだな。ここまで来るのにふたつも作り上げたもんな」
「風太さんのお部屋が可愛くなっちゃう」
「かわいい俺の部屋」
「ふふ」
ミシンの音と、ふたりの話す柔らかい声が部屋の中で静かに聞こえる。
穏やかな雰囲気に思わず口元が緩むくらい優しく落ち着けた。
時々お互いを盗みみて、目線が合えば笑いあう。
「むく、喜ぶといいな」
「そうですね。喜んでくれたら泣いちゃいますよ」
「泣き虫だもんな」
「ふふ、誰のせいでしょうか」
「はは、誰のせいだろうな」
ミシンを止めて、出来上がった足の部分を見る。
形はどちらも綺麗に出来上がっていて、ふたりはホッとした。
縫い上げたパーツを確認して今日はこの辺で寝るか、と風太の声が聞こえて来る。
汰絽は顔を上げて頷いて、小さく笑った。
「たろ、おやすみ」
「おやすみなさい、風太さん」
「おいで」
汰絽とむくの部屋の前で、挨拶を交わす。
風太に呼ばれて汰絽はすっと近づいた。
ぎゅっと抱きしめられて、甘えるように汰絽も抱きしめ返す。
お互いの体温の暖かさに小さく笑った。
「おやすみなさい」
そっとキスを交わし合って体を離し、互いの部屋に入っていく。
ベッドですやすやと眠るむくの隣に入り、そっと抱きしめた。
「楽しみにしててね、むく」
むくの額に口付けて、汰絽も柔らかな眠りに落ちていった。
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