プレゼントは何にする?
水族館の近くのカフェに入り、ふたりはホッと一息ついた。
優しいピアノの音色と美味しそうなコーヒーの香りに、心が躍る。
メニューを眺めていた汰絽が悩んでいる様子で、風太も同じようにメニューを覗き込んだ。
「どれが食べたいの」
「んー、えっと、このクロワッサンのサンドイッチか、パンケーキか…」
「どっちもふたつずつ付いてるみたいだから、どっちも頼むか」
「いいんですか?」
「いいよ。半分こするか」
こくりと頷いた汰絽の頭を撫でて、店員を呼ぶ。
メニューを注文してから、出されたお冷を飲む。
それから時計を見た。
「13時か。やっぱ腹減ったな」
「そうですね。…ふふ」
「どうした」
「んー、水族館面白かったなって。冬だからイルカショー見れないのが残念でしたけど」
「そうだな」
笑いながら話していると料理が運ばれてきて、ふたりは静かになる。
それからテーブルに置かれた料理を見て、汰絽が歓声をあげた。
香ばしいクロワッサンとほんのりと甘いパンケーキに乗ったバナナの香り。
汰絽はカフェラテ、風太はブラックコーヒーを頼んだ。
「おいしそうですね」
「あぁ。ひとつずつ食べるか」
「はい。先どっちにしますか」
「俺はパンケーキの方先に食おうかな」
「じゃあ、僕はクロワッサンを先に。…風太さん、ありがとうございます」
ニコニコと嬉しそうに笑う汰絽に風太も思わず笑う。
柔らかくて穏やかな雰囲気が心地よい。
クロワッサンを頬張る汰絽の頬がもぐもぐと動くのが面白くてまた笑った。
「風太さん今日いっぱい笑ってますね」
「ん? そうか」
「ふふ、そうですよ。いっぱい笑ってる」
「たろもよく笑ってるぞ」
そう言って笑った風太がすっと指先を伸ばして汰絽の頬を撫でた。
口元を撫でると、クロワッサンの欠片が付いている。
指先でそれをとった風太は口元へ運んだ。
「たろ、もう少しでクリスマスだけど」
「そうですね。むくへのプレゼント買わないとですね」
「何欲しがってた?」
「大きなくまのぬいぐるみが欲しいそうですよ」
「大きなくまのぬいぐるみか。どうする、買うか」
「…作るのもいいかなって」
「裁縫できるのか」
「それなりに。風太さんは?」
「俺もまあ、それなりに。家庭科で習った程度には」
ふたりはパンケーキとクロワッサンを食べるのを一旦止めて、顔を見合わせた。
それから考えるように黙ってから、もう一度顔を見合わせる。
「作ろう」
「作りましょう」
同時に発した言葉にふたりは笑いあった。
それから、くまのぬいぐるみの作り方を携帯で検索する。
「この後買い物行った時に型とか必要なもの買ってくるか」
「そうですね」
ふたりはそういってから、またフォークを手に取った。
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