デート
「ん…。まだ夜中じゃねーか」

目がさめるとスヤスヤと眠る寝息が聞こえてきた。
可愛らしいその寝息に思わず笑ってしまう。
すっと髪を撫でると、柔らかな感覚が指先を通り抜けた。


「かわいーな、たろは」

そっと額にキスをして、もう一度寝る体勢に戻る。
汰絽の身体を抱きしめると、少し寒さを感じたのか、腕の中で身じろぎした。
小さな身体はとても暖かくて心地よい。
緩やかに眠気がもう一度襲ってきて、風太も目をつむった。



カーテンの隙間から入り込む日差しが頬を照らす。
身体を起こそうともぞもぞと動き出すと、風太に強く抱きしめられていることに気がついた。
その腕をペチペチと叩くと、大きなアクビと共に風太が目を覚ます。


「ふふ、大きなあくびですね」

「思わず出たって感じだわ。はよ、たろ」

「おはようございます、風太さん」

挨拶を交しあってから、ベッドの中から抜け出すと寒さに体が震える。
うんと背伸びをしてから、ふたりはそれぞれの部屋で着替えた。
汰絽はすぐにキッチンへたち、食事の準備を始める。


「今日はパンにしますね」

「おう。手伝うよ」

「はい、あ、これ運んでください」

作り置きのおかずを運んでもらい、さっとスープを作る。
それから焼きたてのパンを用意してふたりはテーブルについた。


「いただきます」

汰絽の挨拶を聞いて、風太も同じように挨拶をしてから食事を始める。
焼きたてのパンは香ばしくてとても美味しかった。



「よし。デート行きますか」

「はいっ」

ふたりは顔を見合わせて笑いあってから家を出る。
外の寒さに身体を震わせ、そっと近づいた。
手袋をつけてマフラーを付け直す。


「風太さん、寒くないですか」

「俺は平気。お前は?」

「僕も。風太さん、手袋とかつけないんですか」

「あんまり。マフラーはかろうじてつけるくらいだな」

「嫌い?」

「いや。ただ、つけるのが面倒で」

「転ばないでくださいね」

「おう」

ゆっくりと歩きながら話しているとチラチラと雪が降り始める。
もうクリスマスも間近に迫ってきて、テレビを見ていてもクリスマスソングがよく聞こえてきた。
歩いていると頭の中でクリスマスソングが流れ始める。


「最近、クリスマスの歌が流れてて、頭の中から離れなくなりますよね」

「あー、わかる。クリスマスは特にって感じだよな」

「ね。あ、そういえば、どこに行くんですか」

「最初に水族館、そのあとカフェで食事。んで買い物」

「ん、ふふ、定番デート?」

「おう。あんましらねーから調べたわ」

くすくす笑う汰絽が嬉しそうでホッとする。
体を寄せ合って、歩いていると駅が見えてきた。
駅の中に入り、切符を買ってすぐにホームに入るとちょうど電車が滑り込んできた。


「楽しみです」

「俺も」

笑い合いながら座席に座った。
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