冬が来た
「わ、息が白くなりましたね。クリスマスも近いし…きっと雪が降りますよ」

隣で指先が真っ赤になった手をこすり合わし息を吹きかけながら、汰絽は空を見上げた。
汰絽の言った通り、見上げた空はどんよりと厚い雲に覆われている。
真っ赤な指先がかわいそうで、風太はちょいちょいと手招きをした。
公園の中にある自販機で温かい飲み物を買って手渡す。


「ありがとうございます。ココアだぁ」

「帰り道に飲むとうまいよな」

「はいっ。今日はむくがゆうちゃんのお家にお泊まりだから、ちょっとゆっくり帰れますね」

「そうだな。親父が退院したらふたりきりになれる時間なんて今よりもっと減るから、俺的にはすげー幸せ」

「…っ」

風太の言葉に寒くって赤くなっていた頬がさらに赤くなる。
そんな様子に思わず笑い声が溢れて、風太は汰絽に小突かれた。
ダッフルコートを着てぬくぬくしているけれど、寒いものは寒い。
汰絽はまた白い息を吐き出した。


「ゆっくり帰れますけど、早くおこたでぬくぬくしたいです」

「ああ、早くイチャイチャしたいしなー」

「煩悩まみれっ」

「どうせお前の彼氏は煩悩まみれですよー」

風太が不貞腐れたように言うのを聞いて、汰絽は思わず笑い声を漏らした。
それから少しだけ公園に寄る前より近づいて、帰り道を歩いた。



「ただいま」

「おかえりー」

ふたりで帰宅の挨拶を交わしながら、家に入り、洗面所で手を洗う。
それからそれぞれお風呂に入ってあとは寝るだけの格好になってから、リビングのこたつに入った。
こたつの中に入り、こたつの上に広げた弁当を選ぶ。


「このお弁当CMで見て食べてみたかったんです」

「俺もそれ思ってた。これ食べたら、借りてきたDVDみようぜ」

「えー…、それって怖いのじゃないですか」

「いいだろ。もう寝るだけなんだし」

「もー」

そう言いながらも断らない汰絽に笑いながら、風太は弁当を食べる。
いつもの夕飯とは違うが、久々に食べる汰絽の作ったもの以外の弁当も美味しかった。


「映画見る前に部屋あっためとくな」

「はーい」

食後のお茶を飲みながらまったりしていると、風太がそう言って部屋へ向かっていた。
こたつの中はぬくぬくとしていてとても気持ちがいい。
少しだけうとうとしているとすぐに風太が戻ってきた。


「後ろから抱きしめてやろうか」

「んー」

「俺が寒いか。…半纏、半纏」

ソファーにポンと投げられていた半纏を着てから、後ろから抱きしめる方で風太がこたつに足を入れる。
後ろからの温もりになおさら気持ちが良くなってきて汰絽は小さくあくびをした。


「まだ8時だぞ、寝るなよ」

「んー、でも眠くて」

「眠気もぶっ飛ぶやつ借りてきたからな」

DVDのリモコンを操作して、映画をつければ眠気もゆるゆると引いてきたのか、汰絽が前に回った風太の手をぎゅっと握った。
その小さな手を握り返して、蜂蜜色の髪にキスをする。


「いい子」

そういえば汰絽が笑うのが聞こえた。
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