お城
「首里城はんぱないねー。なんていうか、ドラマ思いだす。なんだっけ」
「…俺がドラマとか見てると思ったのか」
「まっさかー。うわ、シーサーリアルシーサー!」
魔よけを見て嬉しそうに携帯で写真を撮る杏に、風太ははしゃぐなよ、と声をかけてから、空を見上げる。
空港で見た時と同じように真っ青で雲一つもない。
暑さにブレザーを脱いだ。
「風太、写真とって汰絽ちゃんに送れば。喜ぶんじゃない?」
「…るせーな」
そういいながらも、スラックスのポケットから携帯を取り出した風太はシーサーの写真を撮った。
素直じゃないねー、と笑う杏の頭を小突いて、チャットを開く。
写真を添付して送れば、すぐに既読のマークがついた。
「…授業中じゃねえのか」
そう呟くと、杏はよかったね、と笑った。
城内の見学を終えてからお土産を見ていると、携帯が振動する。
開いてみると、汰絽から返事が来ていた。
『風太さんのおめめみたいなお空ですね』
「…はは、」
返信の内容に思わず笑いが漏れて、隣を歩く杏がいぶかしげに眉をひそめた。
それから携帯を覗き込んで、杏も小さく笑う。
汰絽の言葉選びはなんとも可愛らしい。
この穏やかさが好きだな、と風太と杏は同じように思いながらもう一度笑った。
「汰絽ちゃん、かーいいねぇ」
「何見てんだよ」
「いいでしょー、減るもんじゃないし。ほらー、また返信来たよー」
「あ?」
杏に言われ、もう一度携帯を見る。
教室の窓から見た空の写真が送られてきていた。
こっちのお空は曇ってます、の文も一緒に送られてくる。
『よかったら、風太さんの写真も、送ってほしいです』
続けて送られてきた文に、風太は歩みを止める。
写真、撮ってあげるんだろうな、と思った杏は笑わずにはいられなかった。
固まっていた風太は考えがまとまったのか、杏を見てがっと肩を組んだ。
それから、近くにあるシーサーを見てから、土産を見ている生徒を睨む。
「お前、ちょっと写真撮れ」
そう言ってから携帯を渡して、怯える生徒を連れてシーサーの前に並ぶ。
そんな風太に杏は爆笑しながら、ピースする。
「は、はいチーズ」
掛け声に合わせて、ぎこちなく笑う風太に、杏はもう笑いが止められなかった。
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