お付き合い始めました。
昼休み、4人はいつも通り空き教室に入った。
小学校の時の給食のときのように、机を4っつくっつけて汰絽と風太が隣に座り、その前に好野と杏が座る。
汰絽と風太はお揃いのお弁当箱を出して、好野と杏はコンビニの袋を取り出した。

隣に座った汰絽が緊張しているのを感じる。
小さな声で名前を呼ぶと、顔を上げへにゃりと頬を緩めた。


「あのさ」

風太が切り出して、汰絽がすっと背筋を伸ばした。
好野と杏がコンビニの袋から視線を外したのを確認してから、汰絽を見ると汰絽はこくりと頷いてからへにゃりと笑う。
今日はよくへにゃへにゃ笑うな、と思いながら、好野と杏を見た。


「俺と汰絽、付き合うことになった」

風太の言葉に、ふたりは持っていたサンドイッチやおにぎりを机に落とした。
それから汰絽と風太を交互に見てから、お互い顔を見合わせる。
一瞬ぽかんとしてから、ふたりはぱあっと顔を輝かせた。


「…た、たろ!! よかったっ、良かったな!! 本当か、良かった!!」

好野は汰絽を見て嬉しそうに笑い、杏は何も言わずに笑う。
おめでとう、と風太に告げて、それから汰絽にも同じように囁いた。


「春野先輩っ」

「ん?」

「汰絽を、俺の親友を、よろしくお願いします!」

ばっと頭を下げた好野に、風太も同じように頭を下げる。
そんな風太に汰絽も頭を下げてしまい、杏は笑った。


「やだな、俺も頭を下げなきゃだ。汰絽ちゃん、風太をよろしくね」

杏が軽くお辞儀をして笑う。
汰絽ははいっといいお返事をしてから、風太の方を見た。
顔を上げた風太は汰絽に視線を移し優しく笑う。
その笑みに、好野と杏は顔を見合わせてもう一度顔を輝かせた。


「弁当、食べるか」

と、風太が言いだして、お弁当を開く。
今日はいつもより少し豪華な気がする。
隣に座った汰絽が微笑むのを見て、風太はよかった、と小さく呟いた。


「にしても、はるのんと汰絽ちゃんがね。嬉しいったらありゃしないよ」

「どこのばあちゃんだよ」

「だってさー。まさか、こんなに早く付き合うことになるとは思わなかったんだもん」

サンドイッチを食べる杏は笑いながら、カフェオレを飲む。
ね、よし君と声をかけるが、好野はそうなんですか、と苦笑する。
汰絽は風太をちらりと見るが、風太も同じように汰絽を見ていて、ふたりは小さく笑った。


「汰絽ちゃんはいつ、風太が好きだって気付いたの?」

「…は、ずかしい、ので」

「うお…、かあいいねぇ」

きらきらと目を輝かせている杏から視線を逸らすと風太がじっと見つめていることに気付く。
その視線は言えよ、と言っているようで、かあっと頬を染めた。
や、だ、と小さな声で言うと、縋るように好野を見る。
知っている好野は苦笑しながら、おにぎりを食べた。
親友が助けてくれないことに気付き、さらに恥ずかしさに頬を染める。


「き、づいたのは…、最近です。お昼一緒に食べなかったとき…」

「本当に最近だな」

「だって、初めて、好きになったから、気付けなかったんだもん」

ぽつりと漏らした言葉に気付いた汰絽はぶわっと頬を真っ赤に染めた。
それから顔を片手でかくして、ちょっと、なかったことに、と呟く。
黙った風太の方を向くと、風太も顔を隠して、汰絽とは反対の方を向いている。
白い髪の中にある耳が赤く染まっているのを見て、汰絽は風太のブレザーを掴んだ。


「真っ赤…」

「うるせ…」

「風太さん、真っ赤」

汰絽が嬉しそうにそういうと、風太は見んなって呟いてから小さく舌打ちをした。
不意打ちだった、と最後に言われて、汰絽はまたへにゃりと笑う。
ふたりの甘い雰囲気に、好野と杏は思わず笑ってしまった。


「これは貴重なはるのんだね」

「春野先輩も赤面とかするんですね」

「俺も人間だからな。…汰絽、その話は家に帰ったら詳しく」

頬の熱が下がってきたのを感じ汰絽の方を向いて、ポンポン、と頭を撫でた。
あ、約束、と約束をしたことを思い出して、汰絽は小さく笑った。
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