6つの約束
「約束、しないか」

「約束?」

「ああ。俺と汰絽の約束」

風太の優しい顔に、汰絽は小さく頷いた。
それから、ふたりはリビングのソファーに移動して、コピー用紙を手に取る。
分厚い雑誌の上にコピー用紙を乗せてボールペンを片手に顔を見合わせた。


「6つくらい考えようか、なんかある?」

「あ、喧嘩したとしても長引かせないこと」

「いいな、それ」

「あ、俺は1日1回はキスしたい」

「ひ、え…っ」

かあっと頬を赤くした汰絽に、風太は笑いながら汰絽の肩を抱く。
腕のぬくもりを感じながら、こくりと頷いて顔をあげると風太がキスをくれた。
軽いキスを貰ってからすぐに顔を背けて、呻って見せると風太はまた笑う。


「俺に隠れたところで、泣かないで」

髪を撫でられて、こくりと頷く。
風太の手の優しさにほっとした。


「風太さんが寂しいときとか、寂しいって言ってほしいです」

「…おう。ありがとう。…たろも言ってな」

「はいっ。…それと、頭をぽんぽんってされるのが好きです」

「はは、それ約束にならないぞ。じゃあ、毎日ポンポンすることって書くか」

風太の笑い声に、汰絽も嬉しそうに笑う。
紙に書かれていく約束が、じんと胸に沁みた。
自分たちの幸せを、表しているようだ。


「最後のひとつ…、むくを幸せにすること、とか、どうだ」

「はい…っ!」

最後の言葉を書いてから、ふたりはその紙を一緒に眺める。
達成感を感じて顔を見合わせて笑った。
コピー用紙に書かれた言葉たちが愛おしくって、汰絽は指先でなぞった。
約束達が、まるで付き合っていることの証のように感じる。


「どこに貼る?」

「電話のところのコルクボードの隣とか」

「そうすっか。写真立てもそこにあるしな」

「いっぱい写真撮ってますし、印刷したら、一緒に貼りたいです」

「おう。約束も、増えていけばいいな」

風太が立ち上がって、ポンポンと頭を撫でてから紙ををコルクボードに貼った。
汰絽もついていって、後ろから風太が貼っているのを眺める。
えへへ、と笑った汰絽に、つられて笑ってしまった。


「そろそろ寝るか」

こくりと頷いてから、リビングを出る。
電気を消す前にコピー用紙を見てから、風太の後を歩いて風太の部屋の前で立ち止まる。
おやすみなさい、と笑うと、額にキスをくれた。
低い声のおやすみに汰絽はあったまった心のまま寝室へ向かった。
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