パフェ
やってきたのは、知る人ぞ知る、と言われそうな奥まった小路にあるカフェ。
黒猫とは違って、柔らかなふんわりとしたような店だ。
こんなところ、誰と来るのだろうか、と思いながらも腰を下ろす。
汰絽の隣に座ったむくは嬉しそうに、足をゆらゆらとしたり汰絽を見たりしていた。


「ほら、好きなの食べろ。おすすめはキウイパフェだけどな」

「子ども用のものはありますか」

「これ」

むくに渡されたメニューを汰絽も一緒に眺めた。
可愛い丸文字で書かれた文字を眺めて、汰絽はどれを食べるか決める。
むくもすぐに決まったのか、これ、これ、と指をさしていた。


「僕がキウイで、むくが苺でお願いします」

「わかった。…すみません」

店員に声をかけて、注文し終えた壱琉は店員が持ってきたレモン水を飲んでいた。
妙に手馴れていて、汰絽がいぶかしんでいると、壱琉がけらけらと笑う。


「五十嵐、いるだろう」

「あの、あなたと一緒にいる?」

「あいつがここ好きなんだよ。男一人で来るのは恥ずかしいからっていっつも連れてこられてた」

「そうなんですか。…例えば、僕が甘いの嫌いだったらどうしたんですか」

「嫌いなのか」

「いえ、好きですけど…。変な人ですね、本当に」

汰絽が苦笑しながら言い、レモン水を飲む。
このレモン水は、丸い透明な給水器に入っていて、その給水器もお洒落なものだ。
目の前に座った壱琉はテーブルの上で指遊びをしているむくを眺めている。
以前、彼らの集会所であった時とは、どこか違うような感じがした。


「お待たせしました」

店員の持ってきたパフェは、上に乗ったフルーツがきらきらと輝いていて、汰絽は目を奪われた。
高く伸びたクリームに張り付いた黄緑色のキウイフルーツが、吊るされた電球に光る。
むくの前に置かれた苺のパフェも、瑞々しい苺が光に照らされて輝いていた。
壱琉は抹茶パフェを頼んだようだ。


「いただきます」

挨拶をしてから、3人はパフェを食べ始める。
むくも上手にスプーンを使って、パフェを食べていた。


「んまー」

「んまーね」

「んまー?」

「おいしいって。本当に奢りでいいんですか」

「当たり前だろ」

壱琉は大きく口を開いてパフェを食べている。
この人も甘いものが好きなのか、と少し驚いてしまった。
汰絽もキウイのパフェを口に含み、美味しい、と呟く。


「で、春野となんかあったのか」

「ぶふっ」

「汚ねぇな」

「…」

むっとして、壱琉を睨みつけてから、紙ナプキンで口元を拭く。
ついでにむくの頬についたクリームも拭って、それを小さく畳んだ。


「お前、そういうことに疎そうだからな。悩むとしたらその点かと思ったんだが。図星だな」

「…探偵さんか何かなんですか」

「俺、感は冴えわたる方なんだ」

「へえ」

素直に認めるのも癪だから、おざなりに返事をすると、壱琉はまた声を出して笑う。
壱琉が笑っているのを聞いて、むくが笑った。
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